2010年4月

三蔵法師の、声。(写真:薬師寺・花展ポスター)

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カミサンが主宰する「野の花と遊ぶ 花の会」が、薬師寺玄奘三蔵院で花展を
させていただいた。4月6日から13日まで、雨あり風ありの長丁場だったが、
無事に終わることができたのは三蔵法師さまが守ってくださったからだと思う。

無事ではあったが、2日目に椿事が出来した。朝一番で行ってくれた当番さんの
電話で。「昨日、お客さまから看板の展の字が違う。薬師寺ともあろうところで、
間違った字を掲示するとは何たることか」と注意されたというのだ。書いたのは
私。篆刻の個展前のあわただしい時に書いたのだが、ぶっつけ本番で、2枚を
実に気持ちよく書けた。「花展」と書いた時は、少し字がうまくなったようにも感じた。

さて、書き直すかどうか。結局は7日間そのままにしておいた。それを指摘
する方も、その後はいなかった。まじまじと看板を見つめる方に、字の間違いが
ありますがお分かりになりますか、と聞いたけれど分からなかったのだし。

「字なんてそんなものです。一点、一画をおろそかにせず書くなんて、小学生の
テストだけです。文字ばかりでなく、言葉だってそんなものです。文字も言葉も、
都合がいいから使っているだけで、それ自体は真実でも本質でもないのです。」 
1347巻ものお経を漢字に翻訳した三蔵法師さまの、そんな声が聞こえた。

夢と、風。(篆刻:夢風)

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東京の個展は、おかげさまでご好評をいただいたのだが、まだ頭の整理が
ついていないので、その話は近々。最終日、搬出を終えて東京から帰ってきた。
近鉄奈良のエスカレーターを上がったら、目の前に『東大寺門前 夢風ひろば』の
電照看板があった。まるで私を出迎えてくれたかのように。淡い緑のイラストに
くっきりと明朝体の文字があって、右下にこの楽篆堂の「夢風」の篆刻がある。

2年前のオープン時は『ふれあい回廊 夢しるべ風しるべ』。『美人の日本語』などで
ファンも多い山下景子さんの命名なのだが、いかんせん長すぎる。書は東大寺の
お坊さんが書いたのだが、修学旅行の中学生が読めないという。そこで、夢と風を
残して改名。明朝体で読みやすくしたので、それに添える篆刻をとのご指名だった。

要するにワンポイントのアクセントなので、読めなくても構わない。で、白川先生の
『字統』と相談のうえ、字源に忠実に、夢は夢占いをする巫女が寝台に寝る姿に、
風は鳳(おおとり)が羽ばたく姿にした。順番では、夢が上、風が下だが、あえて
上下を逆転させた。山下さんが込めた想いは無くなってしまったが、篆刻によって
新たなストーリーが生まれた、とよろこんでいただいた。奈良は遷都1300年祭の
まっただ中。奈良に住む私にも新しい夢がふくらみ、爽やかな風が吹き始めた。

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