2014年9月

小塚さんのつくった、書体。(画像:小塚明朝)

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私が大卒でコピーライターになった時、広告原稿の文字は写真植字(写植)になった
直後だったようだ。写植は活字印刷に代わって、印画紙に文字を焼きつける画期的
な新技術だったが、新聞印刷の世界でも活字から写植に切り替わる転換期だった
らしい。1949年毎日新聞社に入り、55年から書体制作室のチーフデザイナーとして
約15万字を制作したのが小塚昌彦氏。毎日在籍中から写植機メーカーと新書体の
開発に貢献するが、定年後はモリサワで「新ゴ」を開発、IllustratorやPhotoshopの
アドビで日本語タイポグラフィディレクターとして「小塚明朝、小塚ゴシック」を制作した。

金属活字の母型鋳造からスタートして最先端のグラフィック・ソフトにいたる足跡を記録
した『ぼくのつくった書体の話』(グラフィック社)は、篆刻という文字を扱う私にとっても、
数々の示唆や教訓に富んでいるが、日本語書体の研究家・デザイナーの先駆者である
故・佐藤敬之輔氏の逸話がある。「ひらがなのフォルムで悩み、イギリスに渡り転機を
探った佐藤氏が、日本に帰り自宅そばのススキの鋭くしなやかな葉を見てやっと書体の
インスピレーションを得た」という話は、コミュニケーションの道具である文字の美しさと
その本質を言い当てている。余談だが、株式欄が多すぎる日経新聞から他に変える
なら毎日新聞かと考えている。内容はともかく書体制作者が尊敬できるからなのだが。

 

不常識『篆刻講座』 5:赤勝て、白勝て。

20149916139.jpg 「緩急(45?45ミリ)」
中国の篆刻作家は、あまり赤い印泥を使わない。国中に赤が氾濫しているのに、こと篆刻となると赤なんて子どもっぽいとか言って、茶、褐色を使う。日本では、やはり赤系が主流で、私も朱がかった「光明」か、紅がかった「美麗」を使っている。日本人の赤好みには、国旗の白地に赤くが深く影響しているのかもしれない。

篆刻は、文字以外を彫って押したとき文字が赤になる朱文と、文字部分を彫って押すと文字が白くなる白文の2種類だが。私は、いつ頃からか朱文と白文を混ぜる朱白文を楽しむようになった。四角なら左右を、長方形や自然石なら上下に朱と白を配する。4文字の四角い作品では、朱白を市松にすることもある。注文印でも朱白文のご希望がときどきあるが、他の篆刻作家さんで朱白文はあまり見かけない(ようだ)。

さて、この「緩急」。普通なら右の緩を朱文、急を白文でほど良く収めるのだが、ふと糸ヘンを縦割りして朱白にできないかと思いついた。急の細く白い枠を糸の半分の白文にすることで、帳尻は合う。もちろん、このテの試みは紙の上の白黒のデザインだけでなく、画像ソフトで赤白にして仕上がりを確認をしてから彫りはじめる。糸が朱白になるのがポイントだから、それ以外はケレン味を加えず、淡白にした。

いま思えば、展覧会が迫った苦しまぎれの思いつきだったかもしれない。成功か失敗かは分からないが、額装したこれを買ってくださった方がいたから、一応成功と考えよう。篆刻は印泥の赤と紙の白で創る世界。赤と白のバランス、せめぎ合い。赤勝て、白勝て。いや、赤勝て、白も負けるな。篆刻は見た目はシンプルだけど、言葉の意味や字源の物語が加わって深度が生まれる、そんな大人の遊びです。

 

鈴虫が鳴いている、らしい。(篆刻:鈴)

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孵化したばかりの無数のスズムシを虫カゴごといただいたのは7月のはじめだった。
残った親の死んだ体に比べたら体はアリのように小さくて、よく見えないのだが、息を
吹きかけると飛び散って、そこに穴ができるので、いたことが分かるくらい。土の中には
まだ卵もあった。卵が全部孵ったらしいのを確認してから、新しいスズムシ用の土に
替えたのだが、これがひと苦労。紙を近づけると飛び移るのが分かったので、大き目の
白い菓子箱に何回も運ぶ。虫カゴを洗って乾かしてから、土を入れて、噴霧器で適度に
湿らせて、スズムシを戻す。水分補給用という市販のゼリーは、カビが生えることが
分かったので、アルミカップに水ゴケを入れて、水でひたす。こうすれば溺れないから。

主な餌はキュウリかナスだが、ナスの方が好きらしい。暑い時は腐るので、ほぼ毎日
交換する。それだけだと共食いをするらしいので、ヌカや魚粉入りの市販の粉末もやる。

ほぼ毎週、7回脱皮するとオスは羽が生えて鳴きはじめる、らしい。数日前、カミサンが
朝方、その鳴き声で目を覚ました、らしい。夜行性なのだが昼でも鳴いている、らしい。
餌の交換の時、羽を立てて鳴いているらしい姿も見たが、カメラを取りに行く間に、陰に
隠れた。らしい、らしいで憎たらしいが、私は高音域が難聴で、まったく聞こえないのだ。
ケータイの動画で録音してボリューム最大なら聞こえるかな・・・と、やっと思いついた。

 

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