2010年3月

月を、読む。(篆刻:月)

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むかし、ある方に私の守り神は「月讀(読)=ツクヨミ」と言われた。といっても、
たまたま満月を見上げたら、一応敬意を表して手を合わせるくらいだったのだが。
伊勢神宮に参ったとき、近くに月讀宮があるので訪ねたのだが、あっけない程
簡素で拍子抜けしてしまった。内宮、外宮に比べたら、まま子扱いに等しい。

先日、たまたま『ツクヨミ 秘された神』という本に出会った。それで知ったのだが、
ツクヨミに関する文献・書籍はこれが初らしい。だが古事記ではアマテラス、ツクヨミ、
スサノヲはイザナギの子の三神。皇統の証であり、天皇とともに移動する三種の
神器の鏡、勾玉、剣は、それぞれアマテラス、ツクヨミ、スサノヲを体現している。

にも関わらず記紀ともに、ツクヨミの記述はほんのわずかで不自然極まりない。
この国書の編纂を命じたのは天武天皇であり、日本の国体のデザインはすべて
彼が制定し、現在に至っている。そして、そのすべては陰陽道に基づくもの。
陰陽道は道教を父、古神道を母にして天武天皇が創始した原理と世界観であり、
まさに月を読むことなのだ。現に伊勢神宮の各種の行事には「太一」の表示が
数多く見られるという。太一とは陰陽全体を指し、太極図で示されるものだ。

奇しくも私のハイエスト・ハイのマークは、ふたつ巴の太極図。何か因縁を感じる。

4千年を、遊ぶ。(篆刻:游)

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きのう、個展のために頼んでいた掛軸が京都から届いた。出来上がりは実によく、
満足。小品18点も額装が済んだ。それ以外は裏打ちに出し、額の注文も終えた。
あとの残りは、現在追い込みにかかっている『4千年を遊ぶ。』という作品。
「遊(游)」の文字ばかり、漢字の原型・甲骨文、金文からはじまって、現在の
楽篆堂流までを18ミリ角で制作する。現在61点だが、あと10点は増やしたい。

白川静先生の『字統』によれば、遊・游の元は「斿」で、氏族の旗(吹流し)を立て、
国外に旅すること。その後、遊や游に分岐したが、自在に行動し、移動するのが
遊で、もとは神霊の遊行に用いた語。遊びとは、人間的なものを超える状態なのだ。

今回の篆刻「遊・游」は、前半は規定問題として篆刻界の先達たちの模刻をしたし、
中国・日本の書の達人の筆跡をなぞって彫ったりもしたのだが。いよいよ後半に
なればフリー演技で、楽篆堂のオリジナルをあれこれと工夫する段階になる。
55点を越えたあたりから、篆刻の神様が頭の周りを飛び回って、あれもあるぞ、
これもあるぞと囁きはじめる。遊という文字が、石のなかで文字通り遊びはじめる。
そんな状態が、ここ数日続いて、まさに「遊を遊ぶ」ことを満喫しているのだが。

きょうは3月4日。死んだ息子「遊」の38回目の誕生日でもある。

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