2011年3月

専門家を、信じろ?(篆刻:専)

專
きょうは皮肉にも電気記念日だが。再び「内田樹の研究室」の引用。「(2)臨機応変」
は次元が低過ぎるから無視する。「(3)専門家への委託 (前半、略)自然資源、上下
水道や通信や道路や鉄道といった社会的インフラ、あるいは司法や医療や教育といった
制度資本については、管理運営を専門的知見に基づいて統御できる専門家に「委託」
すべきであり、(略)災害への対応は何よりも専門家に委託すべきことがらであり、
(略)私たちは私たちが委託した専門家の指示に従って、整然とふるまうべきだろう。」 
この未曾有の災害に整然とふるまうべきは、政府や東電や原子力安全・保安院だ。

日経新聞3月23日の記事。「斑目原子力安全委員会委員長は「過去に「非常用
ディーゼル発電機が2個とも起動しない事態を想定したのでは原発はつくれない。
割切らなければ設計はできない」と発言したことを指摘されて「割切り方が正しく
なかった。十分反省している。(略)」と述べた。」 これでも専門家を信じろと言うのか。

戦後の日本は専門家に制度設計と運営を任せることで発展してきた。その結果、
電力、農政、教育、年金など、無数の分野が混迷を極めている。カンバン方式ですら
非常時に破綻し生産を停止させた。地方選挙が始まったが、政治の専門家を素人が
チェックするのが民主主義。「專」は袋のものを打ち固めること。専門家の頭は固い。

あえて、否定的意見。(篆刻:否)

否
週刊ポスト4月1日号、新聞広告の闇汁のような見出しの中で、内田樹氏の『いまは
「否定的なことば」を抑制すべきだ』が気になった。「内田樹の研究室」というブログに
同じ主旨の発言があったので引用する。「こういう状況のときに「否定的なことば」を
発することは抑制すべきだと思う。いまはオールジャパンで被災者の救援と、被災地
の復興にあたるべきときであり、他責的なことばづかいで行政や当局者の責任を問い
詰めたり、無能力をなじったりすることは控えるべきだ。彼らは今もこれからもその公的
立場上、救援活動と復興活動の主体とならなければならない。不眠不休の激務に
あたっている人々は物心両面での支援を必要としている。モラルサポートを惜しむべき
ときではない。」 内田樹氏は大学教授らしいが、あえて私はこの主張を否定したい。

彼は、国難に対処すべき政府と様々な現場の不眠不休で働く国民の話をない交ぜに
している。パフォーマンスと激昂に揺れ動き、目は虚ろ腰も据わらない首相を肯定的に
認め、モラルサポート(こんな言葉あるの?)したら、どうなる。終戦直後、生き残った
国民のすべてが復興の主体だった。その時、戦前・戦中の体制や価値を全検証して
肯定と否定を明確に分別しなかったことが、この国の現在を曖昧にしてしまったのだ。

篆刻は「否」。不と祝祷の器「サイ」で、神が承諾しないこと。神は時に、強くNOという。

東電、崩れる。(篆刻:崩)

崩
仙台の兄とは、昨日14日の朝、携帯で話ができた。太白区の家のガラスは
割れなかったものの、屋内のすべてが散乱して、片づけに一日かかったという。
「兄の家は太陽光発電だから、万一停電でも大丈夫」と漠然と思っていたが、
原発ですら停電で電源がなく、炉心溶融の危機にある。原発の非常用電源が
ディーゼルエンジンと聞いて、唖然とした。あまりに原始的、蓄電設備すら無い。

20年以上前、関西電力の広告を制作した。朝日新聞和歌山県版に出す全5段
だが、内容は子供だましの他愛もないクイズ。隅の方に原子力のひと口メモの
ようなコラムを入れた。和歌山に原発建設の計画があり、広告掲載料を払うことで
朝日の原発批判を封じ込めようとする意図がありありだった。毎月一回のシリーズ
だったから制作会社としては助かるが、個人的にはこんな嫌な仕事はなかった。

原発のこの危機的状況に、政府にも当事者の東電にもコミュニケーション能力が
ない。現状を要約し結論を先に言うべき初歩すら出来ない。中でも東電広報の記者
会見はひどい。冒頭、配布資料の枚数で狼狽している。会話の出来ない赤ん坊が
原発情報を担当しているに等しい。この企業に日本は首都圏の発・送電を委ねて
いる。篆刻は「崩」で、神梯の崩れること。すごく悔しいが、日本はすでに崩れている。

海が、震えた。(篆刻:震)

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さきほど、大阪の息子から携帯にメールが入った。「関西電力の電気を東北に送る
ので、家の不要な電気を消して節電・送電に協力して欲しい」との転送依頼だった。
すぐ不要の電気を消して、カミサンと二人で携帯アドレスの分かる範囲に送った。
(後に、これはチェーンメールと気づいた。内容がいかに善意であっても、チェーン
メールは大規模災害時に通信の大きな負荷をかけることになったと、反省した)

仙台の太白区に兄がいるが、昨日も今日も電話、携帯がつながらない。(繋がらない
原因のひとつが、自分が送ったチェーンメールだとは) NHKの安否情報に電話で
依頼し、携帯の伝言も登録したが、兄の方が登録していないので分からない。
NHK教育の安否情報では、太白区の人から「無事」がいくつも入っていたから、
大事はないと思うのだが。せめてと思い、アマゾンの通販で、水10リットルと
カセットボンベ3本×3を手配したが、配送網が復旧すれば、かなり早くに届くだろう。
(この注文は、その後配送不可能の通知がきて、キャンセル扱いになったが)

篆刻は「震」の元の字、「蜃」。こんな時に字源の解説もないのだが、蜃という貝が
揺れ動く形。三陸沖の海の中で、何かが大きく動いた。日本中で心が揺れている。
東北で、みんなの体が寒さと恐怖で震えている。亡くなった多くの方の冥福を祈る。
合掌

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