2011年6月

パイプ、漏れる。(篆刻:管)

管
離れに行く土間に、また猫がおしっこをたっぷりした。と思ったのだが、ほとんど
匂わないから猫ではないらしい。時間がたつと、固いはずの三和土(たたき)の土が
ゆるくなっている。掘ってみれば、塩ビのパイプから、わずかに水がしみ出していた。

幸い有り合わせの塩ビパイプと継手をかき集めれば、つなぎ直せる。山の水を貯めて
ポンプで送っている配管だから。ポンプの電源を抜き、いくつかの蛇口から水を出して、
パイプを切りはじめたら、水が勢いよく噴出した。山水ではなく、水道のパイプだった。
急いで元栓を止めて、作業を続けた。直線のパイプを切って、そこに新しいパイプを
入れるには、継手の長さが増えて差し込めないから、直角のエルボーという継手が
4つ必要だ。漏れた所を切って、端にエルボーを付け、エルボー2つでコの字にした
ものを差し込めばいい。こうして、ざっと2時間ほどで水道管の水漏れは直ったが。

篆刻の「管」は、竹管の楽器のこと。竹や塩ビのパイプなら大したことはない。原発の
浄水装置の金属の配管も漏れで手間どったが、それも直ったらしい。竹冠なら何とか
なるが、これが草冠の「菅」となると、にっちもさっちも行かない。菅はカヤツリグサ科の
スゲで、笠や蓑にする。誰が見たってボロボロの破れ笠なのだが、当の本人は梅雨も
しのげる、夏の日差しも大丈夫と思っているのか。破れかぶれじゃシャレにもならない。

墜ちる、話。(篆刻:墜)

墜
鼻をかんでも、クシャミをしても、トイレで息んでも右の脇が痛む。3日前、1.5Mの
石垣の上から落ちて、コンクリートに腰、肩、肘を強打した。骨折はないようだが、
その夜は右足を踏ん張ると痛くて歩行困難。翌日は肩が痛み、いまは脇なのだ。

家の前の市道添いの水路の草を刈った。水路は農業用水だから水利組合の管轄。
春の田植前、水路の掃除、草刈をしてくれるが、この季節には草丈も伸びて放って
おけない。ところが、水は勢いよく流れているから、刈った草が流れていって、ずっと
先で草が詰まり、市道に水があふれ出る。そこで竹のスノコ状のストッパーを水路に
置いて、草を取りながら刈り進むのだが。そのストッパーを次の場所に移そうとして、
足が水路にはまりそうになった。オッと思った瞬間墜落した。痩せても枯れても剣道
三段だから、これくらいで済んだのか。「干し武道」家だから無様に落ちたのか・・・

草深い田舎に住めば、これしきは驚くこともないが。震災直後の避難所で水が無い、
寒いと訴える人の向こうには木材のガレキの山に雪が積もっていた。ドラム缶を探し
たき火をすればいいのに、それで雪を融かせば飲めるし風呂にも入れるのにと思い
ながら見た。篆刻は「墜」で、左が神殿の梯子、右が犠牲の犬と手で、神の降り立つ
地のこと。人が墜ちるのは災難だが、雪や雨が墜ちてくるのは神の恵みと考えたい。

タイムドメインの、音。(篆刻:音)

音
これは、「音」。神への祝詞を入れた器に、偽れば神罰を受ける意味の辛(針)を
置いて祈る。それに神が感応して自鳴を発することが、音。この音づれが訪れの
語源だが。先日、若いM.K.くんが小さなスピーカーを持って、我が家を訪れた。

私は、オーディオに興味はないし、高音が難聴。パソコンに取込んだCDを安物の
スピーカーで聞いているし、篆刻を彫れば音など聞こえなくなるが。いやはや驚愕。
いままで聞いていた音楽は、何だったのだ。これも安物だがCDラジカセの音など
プラスチックの箱が振動する雑音の集合だった。テレビの洋画を見れば、まるで
映画館のような臨場感。会話も効果音もすべてがクリア。空間の中に音源がある。

これを書くために、初めてパソコンにつないでビートルズの"アビーロード"を聞いた。
ああ、ジョンは、ポールは、ジョージはこんな想いで歌ってくれていたのか。リンゴは
こんなに真面目に叩いてくれていたのか、と初めて知った。目頭が熱くなっていた。

タイムドメインという理論は難しくて解らないが、音の形をそのまま自然に存在させる
ことらしい。開発者・由井啓之氏は「1枚のレコードに何億円もする名画以上の感動が
入っている。世界中の人に毎日感動の生活を送っていただきたい。それが願いです」と
おっしゃる。私は高音難聴を棚に上げて断言する。「18,900円で、人生が深くなる」と。

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