2012年7月

気の、体感。(篆刻:気)

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気功の講習会に誘われたので、カミサンと参加した。以前に書いた合気道の藤平
光一先生の「折れない腕」を実際に体験しているので、気の存在やパワーは信じて
いるが、気功師と接するのは初体験だった。会場は畳が敷かれた合気道の道場。
参加者は20人ほどで、隣の人と左右の腕を交差させたダブル握手での挨拶から。

気功の先生が、右手を振りながら中央の畳一枚に気を集めた。それぞれが自分の
場所で前屈をする。指先が畳に届く人届かない人はさまざまだが、気を集めた畳で
もう一度前屈すると、全員が4、5センチは指先が伸びた。また両腕を前に出して、
相手がそれを抑える。腕が前の時は、何とか抵抗できるが、右や左の時はどちらかが
弱く下げられてしまう。その後、気を整える運動をしたら、左右どちらも抵抗できた。
気を整えることは、体のゆがみの矯正にもなった。立つ練習もある。両足の内側で
立ち、頭から一本の棒が下へ伸びていくイメージを強くすると、片方の肩を押されても
体はふらつかない。これだけは剣道で覚えていたので、教えられる前からできたが。

最後は先生と手の平を合わせて力で押される。何とか抵抗できるが、次に気を受ける
と、体ははじかれたように動く。私はその後倒れたが、なぜ倒れたのかはいまだに
分からない。分からないが、気があることを体感したのは貴重だった。篆刻は「気」。

独り、楽しむ。(篆刻:独楽)

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篆刻は「独楽」。かなり昔、松岡亮仁さんから、好きな言葉だからと注文されたもの。
その松岡さんが、昨日亡くなった。脳のガン「湿潤性アストロサイトーマ(星細胞腫)」で
闘病4年近くの結末だ。広告代理店Dのコピーライターだった頃、神戸大丸の仕事で
出会い、もう15年ほどの付き合いになる。篆刻教室「天の会」の第一号会員でもある。

さて、ここまで書いて何をどう書いたらいいのか。そう、4年前の秋、家の前に知らない
車が停まった。松岡さんだった。三游会にほぼ毎回来てくれ、娘さんが生まれるたび
篆刻を依頼されたが、それ以上の交際はなかったのに、こんな話をされた。制作から
営業になって得意先との会食があり、時間待ちで貰いタバコをすったら気分が悪く
なった。念のためと診断を受けたら、脳に雲状のガンが発見されたという。早期発見で、
ガンと気分が悪くなったことに因果関係はなく運が良かった、奇跡だと医者に言われた
そうだ。切除出来ないので、抗ガン剤投与と放射線治療を続け、入退院を繰り返した。

治療をしながらも、月1回「天の会」に参加して、「行雲・流水」などの作品も残している。
ブログ『転がる路傍の石頭』は、去年の大晦日が最後になった。なぜ「独楽」という言葉が
好きなのか。なぜ私にガンの話をしに来たのか。聞きたいことはいくつもあるが。メール
アドレスは奥さんとふたりの娘さんの名が組み込まれていた。その3人を残して逝った。

木を彫る、石を彫る。(篆刻:彫)

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京都の岡崎には、なぜか縁がある。剣道の昇段試験で何度も通ったのが武道場。
篆刻の掛け軸をお願いする大谷錦生堂さんとの出会いも、岡崎のあるお店だった。
近代美術館近く、画材と額縁の博宝堂で見かけた額縁は、虫食いの木で、角には
さりげなく草花がペイントされている。カミサンも気に入ったので、迷わず購入した。

以来、岡崎に行くと必ず額縁を見せてもらう。すべての額は、ご主人の太田實さんが
2階の工房で手造りする一点物。重厚な彫りもあれば、カラフルなジェリービーンズを
ちりばめた遊び心一杯のミニ額もある。東京の熊谷守一美術館で個展をした時には、
小品の20点ほどを太田さんの額縁だけでまとめて展示したのが、大いに好評だった。

そしてこの5月には、「2階をアートギャラリーにした。太田實・木彫展をやっているが、
篆刻と額縁でコラボをしないか?」とのお誘いを受けた。早速伺って、数々の力作を
拝見。木彫への熱い想いを額縁に昇華されていることを改めて知る。篆刻は「彫」で、
周は彫飾を加えた盾、彡はその美しさを意味する。形と色、模様で多彩なアイデアを
展開する太田さんの額に、印泥の赤一色でどこまで応じられるかが、不安なのだが。

期間は10月23日?28日、テーマは《居心地のいい言葉たち。篆刻:田中快旺&
額縁:太田實 コラボ展》と決まった。居心地は確かだが、いい言葉が彫れるか・・・

カエデと、生きる。(篆刻:楓)

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矢野正善さんは、入江泰吉氏の弟子で、独立して関西の料理写真の草分けとなった
カメラマンだが、料理の撮影に使う草花を栽培するうちカエデに魅了された。とても
身近なのに、詳しい観察がされず資料も乏しかった、それなら自分がと収集研究を
はじめて、いまでは日本屈指のカエデ収集家だ。奈良市内に借りた土地で千本余を
育成したが、奈良県宇陀市菟田野に招かれ、旧宇陀小学校跡地で「宇陀カエデの郷」
づくりに奮闘されている。先日、縁あってお訪ねすることができたのは幸いだった。

すっかり公園風に整った敷地にカエデを植込んだのは今年3月。どこに何を植えた
かの確認もまだできないほど忙しいのに、カエデとモミジの違いも分からぬ我々に
長時間にわたって親切にご説明いただいた。地植えとビニールハウスで1200種、
3000株のカエデ・ワールド。カエデと言っても、どれだけ多彩かは矢野さんのHP
《カエデ モミジ 写真植物園》に満載されているが。「モミジは秋の紅葉」と思われ
ているけれど、もっと美しいのは春だと何回もおっしゃる。篆刻は、昔の注文印の
「楓」だが、中国のフウという木の文字が誤ったまま使われてしまったそうで、正しい
漢字は「槭(シュク・木へんに戚)」。喜寿を迎えた矢野さんは玩槭爺を名乗られる。
タイムドメインの由井さんも70代。まだまだ現役、そのパワーには圧倒されるばかり。

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