2013年8月

上幌ワインを、飲む。(写真:上幌ワイン・ラベル)

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北海道からの篆刻の依頼は2011年の4月だった。家族で移住して自らもブドウを
育て、10R(トアル)という醸造会社を立ち上げ、地域の農園のブドウも醸造、「上幌
ワイン」というブランドにしたいというお話。どんな方か調べず「針葉樹とトンビも」と
いうお話のまま素直にデザインした。依頼主のブルース・ガットラヴさんがコンサル
ティング醸造家として世界中で活躍されている方と知ったのは、かなり後。それから
2年以上たって、ラベルは他のデザインになったかとあきらめていた。最近検索したら
篆刻が押されたボトルの写真がある。「この夏、待望のリリース!」のニュースもある。

早速、ガットラヴさんにメールし、奈良で買えるのは「酒食市場エポック」と聞いて、
すぐに注文。電話でも念を押したら、店主の藤井さんは10Rを訪ねていて、篆刻の
作家が奈良と聞いて誇らしかったと、4本という無茶も許していただく。クール便で
届いたのは、友人と誕生日や引越しのごちゃ混ぜパーティの日。ラベルはボトルの
下に細くあって、水彩絵の具の緑の濃淡。10Rの由来が「昔むかし、とある処に」だと
いう、そんな情緒があふれている。さて、「2012藤澤農園・余市ケルナー」の味は。

私はワインに疎いけれど、言わせていただくなら「ここまでピュアになれるものか!」
味は至福、ラベルは眼福。残りの3本は結婚式の手土産なので冷蔵庫に厳重保管中。

 

巨匠からの、句集。(篆刻:健)

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一応、盆休みなので高校野球を見ているが。手持ち無沙汰なので、ゴミに出すため
使い捨てライターのガスを使い切ろうと思ったが、暑いし熱いのであきらめた。そこに
ゆうメールが届いた。自由律俳句の巨匠、第一回尾崎放哉賞受賞者の木村健治氏の
4冊目の雑文、写真つきの句集『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)だった。

いまだ自由律俳句というものが解らないので、掲載順に好きな句を挙げれてみれば、
「母帰らぬ日はかもめ食堂麻婆豆腐」「母焼く朝のネクタイを結ぶ」「母に隠し事あり
浅蜊が砂を吐く」「草原へつづく蒙古斑撫でてやる」「尼僧にも戸籍あって紅葉掃く」
「まっすぐに電柱凍ててあれがオリオン」など俳句的風格のあるもので、家族など
身内への優しい眼を感じる。その優しさが外に向くと一転、「バリウムいちご味と
言われても」「鯉のぼり泳げど繋がれている」など川柳的ひねくれ目線になるのが
惜しい、と思うのだが。振込み用紙が無いから頂戴したとして自由律俳句が苦手な
方にも、さすがコピーライターだから写真と雑文が面白いことは保証しておきたい。

しかし、この篆刻「健」は彼が制作会社の役付きになったお祝いに贈ったものだが。
本の扉にも添え状にも押さず、封緘にも使っていないのは、どういうことなのだろう? 
篆刻を上手に使えるようになれば、真の巨匠になれるのだけれど、惜しいなあ・・・

地下水の、源。(篆刻:源)

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ニュースを見てイライラしていた。福島第1原発の汚染水問題。山側からの地下水が
1日1000トンもあり、敷地の地下や建屋には1日数百トンが流れ込んでいる。報道は
凍土壁だ、遮水壁だと対症療法ばかりで、なぜこんな地下水の多い場所に原発がある
のかを教えてくれない。検索でやっとたどり着いたのは、雑誌ENECOの記事だった。

吉村和就氏によれば、福島第1原発は標高35mの台地を切り崩して標高10mで
整地されたが、標高27mから10mの間は常に地下水が湧き、地盤がぬかるみやすい
含水層。地中にパイプを打ち込みポンプで連続的に水をくみ出す工法が多用されて
いるが、梅雨時は重機がぬかるむので鉄板を敷くほど。地下水脈の上に建設されて、
今その地下水に悩まされている。現在、原子炉は岩盤の上に建設されるが、当時は
敷地が広く、土木工事のやりやすい場所が選ばれた。工期は突貫で10ヵ月だった。

話は変わるが、我が家の敷地北側に蔵の跡がある。山からの水が地下を流れている
ので蔵は朽ちたらしい。そこが最近2ヵ所陥没した。水の通り道で空洞になっている。
吉村氏は「造成後40年以上の地層には随所に水道(みずみち)が出来るのが常識で、
単純な地下水シミュレーションでは解析不可能」という。近所のお婆さんでも「水の道
ばかりは変えられない」と言う。地下水を止めるには、山を削り去るしか方法はない。

猫の、縁。(篆刻:封緘)

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勢いよく流れる農業用水に体半分を流されそうになっていた子猫2匹を助けたのは
1年前の8月5日だった。獣医さんによれば生後1ヶ月ほどだったから無事1歳を
迎えた。黒とグレーの縞はお腹の模様が鯖のようだからサバに。シャム猫のように
顔、耳、足、尾が黒く、他はクリームの方は白身の魚のタイと名付けた。最初はサバが
よく甘えて、タイはそれを見ていたが、いつか性格は逆転して、サバが神経質で家に
いることが多く、タイは天衣無縫で夜まで外で遊んでいる。私は朝、玄関を出てから、
四方拝をして新聞を取りにポストへ行くが、この柏手を聞いた2匹が飛んできてポスト
まで先導する。タイは体をすり寄せて撫でてくれとせがむが、サバは私につかず離れず。
タイだけ撫でればひがむので、サバも手を伸ばして撫でてやる。夜まで外で遊んでいる
タイを呼ぶには柏手を打ち、タイ!と何度か呼ぶと帰ってくる。いったん家に入れば、
一日中遊んだから、ベッドで人間のように手足を伸ばして爆睡するが、それでもタイと
呼ぶと小さく鳴いて、シッポも動かす。先輩の猫たちも、最初はすねたり怒ったりしたが
最近では首を並べて餌を食べるようになった。この季節、子猫のオモチャはトカゲや
バッタ、セミと数えきれない。替えたばかりの畳のあちこちに死屍累々だが我慢ガマン。

篆刻は6本の線で縁をあらわした私用の新しい封緘だが、サバとタイとも切れない縁。

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