2014年3月

刃物、怖いですか。(篆刻:刃)

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年度末で村や神社の雑用が続き、ブログがすっかりお留守に、と言い訳しつつ・・・

包丁やナイフが怖いから家に置かず、カット野菜を買って料理する女性がいるとか。
それほどではなくても、篆刻が好きで、とても上手に彫るけれど、印刀で手を傷める
のが怖いからと、わざわざ皮の手袋を自分で縫って、左手にはめる人を知っている。
その彼の育った環境を聞けば、父親は伝統工芸の絵描きだったそうだ。それならば、
台所以外で刃物といえば、鋏や小刀くらいだけだったのだろう。怖いのも仕方ない。

私の家は家具屋というか両親ふたりの木工所だったから、父の朝一番はカンナ研ぎで
ノミもあれば、大きな丸い刃のどう猛な昇降盤もあった。刃物に囲まれて育ったような
ものだから、刃物にはもちろん電気工具にもほとんど恐怖感がない。剣道を習って、
少し居合らしきものもしたが、真剣で竹や巻きワラを切ることにも抵抗がなかった。

この春、孫が小学校を卒業して中学生になる。この機会に、肥後守(ひごのかみ)を
あげようと考えている。私の子どもの頃は、男の子の外遊びの必需品だった折り畳みの
小刀。元服というほど大げさではないが、子どもから少年になるならば、刃物の一本も
持たねばなるまい。篆刻は「刃」で、刀の刃の部分に光を持つ文字。新品を買わずに、
何本かある肥後守の中で大き目の刃渡り7センチをピカピカに研いで、渡そうと思う。

42歳の、遊。(篆刻:PLAY)

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庭でラッパズイセンが咲いている。この水仙、最近はなぜか花屋で見かけないが、
遊が生まれた42年前は一般的な花だった。出産した横浜の日赤病院から家に
来る日、玄関の木桶いっぱいに入れて迎えたのは、いまでも色鮮やかな記憶だ。

遊が高校生の頃だったか、カーステレオからトム・ジョーンズの“思い出のグリーン
グラス”が流れていて、助手席の遊に「これを結婚式で歌う人がいるけれど、死んで
棺で故郷に帰る歌だぞ」と話したことがある。その後、ちゃんと歌詞を調べたのか
「やっぱりそういう歌だったね」と言った。部屋には相当な数のCDが残っていたが、
音楽の話をしたのは後にも先にも、この曲だけなのだ。監獄で死刑になったこの曲と、
鈴鹿のバイクレース事故との違いはあれ、死して我が家に帰るのは同じ。この曲と
“七つの水仙”は遊とダイレクトにつながるから、好きな曲だけれど、とてもつらい歌。

27歳と9カ月で逝った面影しか残っていないから、42歳など想像もできないけれど、
1週間違いの年子の弟を見れば、それほどオッサン臭くなっていないのではないか。
結婚しているか、子どもはいるだろうかと考えないでもないけれど、遊はあのままの、
若いままの遊でいい。篆刻は「遊を遊ぶ」と題して「遊」70点を彫ったうちのひとつ。
遊は名前どおり遊びの天才だったから、私も負けずにもっと遊ばなくっちゃ、篆刻で。

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