2014年5月

漢字の成り立ち、NOW。(篆刻:字)

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私は篆刻を彫る前、すでに彫った文字でも白川静先生の『字統』(平凡社)で字源を
再度確認して原稿をつくる。だから『字統』は手引きであり、教科書なのだが。それが
30年前に停止した考証であり、新しい資料によって否定されたことも多いと知った。

『漢字の成り立ち』(落合淳思、筑摩選書)は、字形(視覚)を主体として字義(意味)
を伝達するのが漢字の強みで、白川を字形からの字源分析法を確立したと高く評価
するが「白川は1960年代の情報をほとんど更新しないまま研究を続けた」「古代
文字で確認できない呪術儀礼や原始信仰と解釈するものが多い」「各資料の時代
差をあまり重視していない」「甲骨文字の意味をあまり重視していない」と容赦ない。
だが落合の本意は過去の研究の批判的継承であり、長く停滞していた字源研究の
最先端を目指し、公開されたすべての甲骨文字のデータベース化にも着手している。
『漢字の成り立ち』は、漢字の原点に興味あるすべての人に読んでほしい名著である。

以前、白川先生の娘さん・津崎史さんからのお便りに「父の説」とあって、その謙虚な
姿勢に感心した。私とて100%正しいなどと思っていないのだが。それでも字源研究
で人知の及ばない自然や神への畏敬を強く意識する「白川説」を、私はこれからも
篆刻制作の基盤に置きつづけようと考えている。文字はひとつのロマンなのだから。

30年目の、庭。(篆刻:庭)

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我が家には8×5メートルほどの前庭がある。約30年前に引っ越して来た時は、
きれいにジャミ石が敷かれていた。この家から大阪に通勤したが、忙しくなって
家に帰れない日も多く、庭は荒れ放題になった。雑草は嫌いではないけれど、
草が膝まで伸びたこともあって、知人がゴルフのついでに寄ったけれど引っ越した
と思って帰ったこともある。やっと本気で何とかしようとしたのは、逗子から戻って
ここを仕事場にしてから。花壇というほどではないけれど、大きい石や枕木で花を
植えるエリアを仕切った。前庭のジャミ石も敷き直したけれど、だんだん土にめり
込んでササやカヤ、スギナ、タンポポ、スミレが生えてくる。周囲の草刈りに加えて
前庭の草引きは、歳とともにきつくなる。いよいよ本気で雑草対策をしなくっちゃ!

ジャミ石を敷くだけだと元の木阿弥だから、下に雑草防止シートを敷くことにした。
ササ、カヤ、スギナも突抜けないデュポンの“ザバーン”高耐性タイプ。雑草の
根まで掘り出して引き抜く。転圧機を借りて土を締め、高低差も無くす。シートは
鋏で切ってすき間のないように敷きつめて、ピンでとめれば準備完了。ジャミ石は
1トンほどを一輪車で数えきれないほど運んで、敷き詰める。こうなるのに30年
かかった。もう草の一本たりとも許さないぞと、ビールを飲みながら心に決めた。

マクドナルドの、マとハ。(写真:マクドナルド・看板)

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最近では見ることがなくなったマクドナルドのこの看板。いわゆる頭揃えにはなって
いない。20代後半、グレイ大広で棚ぼた式にマクドナルドのディレクターになったが、
ハンバーガーの無料券からCM、CIまでの何でも係。看板のデザインを統一すると
いう時、デザイナーのIさんが「マとハを揃えると読みにくいからズラしたい」と言う。
確かにそうだったから、藤田社長に説明して、この形に決定した。それから40年。

Iさんはデザイナーをやめ、奥さんの実家であるプロパン会社に転職した。専務から
相談役になったが、「社内のリフォーム事業部とは別に、新築もできる会社をつくる。
会社のロゴタイプは篆刻にしたいし、コンセプトなども手伝ってほしい」という依頼が
あった。社名は「古今」で、「古きモノ・コトを生かしながら、住まい手の想いを付加して
新しい今に変えていく会社」にしたい、という。そうであればコンセプトは「新しいのに、
懐かしい」。これは大丸神戸店で長く使ったストア・コンセプトだが、あえて提案した。
ロゴはCOCONがフランス語の繭(まゆ)で、住む人の想いを紡ぐ、やさしく包み込む
イメージだから漢字の古今を繭の形で囲んだ。4月半ばには法人登記も済んだ。

Iさんは70過ぎだから、この会社を経営者としての卒業制作だと考えているだろう。
私も広告から篆刻へと軸足を移しているがこんな形でお手伝いできたことがうれしい。

※つい先日、JR九州のななつ星のデザイン・コンセプトも「懐かしい。新しい。」だと
知りました。これは普遍のコンセプト、なのですね。

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