2014年7月

不常識『篆刻講座』 2:使えるものは、何でも使う。

2014722114748.jpg 「空(40×40ミリ)」

これまで「空(くう)=穴+工」は何回も彫ったけれど、ウ冠の下の八がパンダの目のようになる。パンダだと思うとその下の「工」まで口に見えてくる。やっとパンダじゃないかなと思えたのが、これ。上の点を取って、ワ冠にしてしまったが、この円はコンパスで書いている。それを鉛筆で適度な太さにして、細いサインペンで清書する。この段階で、機械的、無機質なコンパスの線は、もう消えていると思うのだが、どうだろう。

この清書したものをトナー式のコピー機でコピーする。トナーの面を印面に当てて、裏から除光液で湿らせると、カーボンが印面に移って、きれいに転写できる。偶然性の雅味を尊ぶ篆刻の先生はこの方法を嫌うけれど、石の性質や彫る人のその日の調子があるから、印面のカーボンの線を100%そのままに彫ることなどとても不可能。偶然性に意固地にならなくても、偶然性は嫌でも向こうからやってきます。

それでも多くの篆刻教室が厚紙に朱墨と墨で原稿を書き、印面にも朱と墨で逆に手書きで写すことを教えているようです。なぜそんなことに手間暇をかけるのか理解できない。多少の経験があれば、白い紙に黒い線だけで、どこが朱か白かは分かるはず。デパートで実演している中国・西冷印社の人だって、印面に直接筆で逆文字を書き込む。日本では朱墨を使うと話しても理解不能、キョトンとするばかり。

私はもちろん彫るのは印刀だが、小さな石の塊りが邪魔すれば迷わずガラスの彫刻などに使うルーターで削り取る。機械は臨機応変、必要に応じて使うべきです。機械を毛嫌いするなら、機械で切って磨いた印材も使えないはず、原石を買って金ノコで引かなくっちゃ。コンパスの話に戻れば、篆刻の先生の多くは、もっての外とおっしゃるでしょうね。でも、葛飾北斎の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」で、北斎先生は明らかにコンパスをお使いです。

 

生物を、真似る。(篆刻:模)

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夜、居間のガラス戸に張り付いたヤモリに猫が飛びつく。庭に猫が吐いた毛玉がある。
猫つながりの話だが、バイオミメティクスの話でもある。生物=bioと真似る=mimeの
合成語「生物模倣技術」で昆虫や動物の体の微細構造を技術革新に役立てる取組み。

ヤモリは一本の足裏に650万本、1平方センチなら20億本もの細かい毛があるので
ガラスでも接着できる。これを真似たヤモリテープは、もう4年も前に日東電工が開発
済み。猫のザラついた舌はシャープがサイクロン掃除機のゴミ圧縮ブレードに応用した。
シャープはアホウドリ、イヌワシ、トンボの羽根をエアコンに、イルカの表皮や尾びれを
洗濯機に、海を渡り数千キロを旅する蝶のアサギマダラの羽根の仕組みを扇風機に
応用したりと、数々の家電をバイオミメティクスで進化させているパイオニアなのだが。

それでも日本は欧米に大きく後れをとっているそうだ。原因は、生物学と工学の間の
研究者の交流不足、学問の縦割り。以前から「宇宙や月、火星も大事だろうが地球で
まだまだやることがあるはずだ」と、直感的に思っていたけれど。食物連鎖の頂上に
君臨しているはずの人間は、貝が冷たい水中でも殻を成長させているのに、加熱し
なければセラミックスを作れない。魚の群れが体に触れずに素早く泳げるのに、車は
渋滞したり衝突したり。人間は驕りを捨て、人間以外の生物に謙虚に学ばなくっちゃ。

 

不常識『篆刻講座』 1:上は密に、下は疎に。

2014710175122.jpg  「幸都萬具(40×40ミリ)」

自分の篆刻を解説するのが「篆刻制作にいそしむ方々のヒントになれば」などというのは、実におこがましいけれど。篆刻教室に通いながら、篆刻の決まりごと、約束ごと、加えて先生の押し付けに息苦しくなっている方も多いのではないかという老婆心で。不常識な『篆刻講座』を不定期で始めます。

誰からも教えを受けたことのない独学、青天井の風通しの心地よさを知っていただければ、まだまだ篆刻の魅力や可能性の無尽蔵に気づいていただけるのではないかと思いつつ、恥を承知で旧作のホコリを払いながら、第1回目は「幸都萬具」です。

彫ったのは35年ほど前。篆刻という遊びを知って間もなくの頃、「サイドバンク」というバーの名前を「幸いの都によろず具わる」と漢字にもじって彫ってみた。大阪・梅田の紀伊国屋書店に篆刻の手引き書が一冊しかなかったから、まったくの無手勝流。あれこれデザインするうちに、どの文字も下に流れる線があるのに気づいて、素直に伸ばしてみた。

それから10年ほどして、これを榊莫山先生に取材の合間に見せたのだから、我ながら恐ろしい。彫った後に本で知った「上は密、下は疎」という定石のひとつなのだが、莫山先生は石を見るなり「おもろいなァ、おもろいなァ」とおっしゃった。

この時「まァ、よくある手法のひとつやな」と軽くいなされていたら、私はいままで篆刻を続けていなかっただろう。「上密下疎」は上手く決まれば面白いけれど、下に伸びる線が無い文字に使えないのは言わずもがな。不常識と言いながら定石の話で始まってしまったけれど、児戯に等しいこれを莫山先生に見せた非常識の話でお許しください。蛇足ながら「人は、ほめると育つ」。これも常識ですが。

 

ウィキペディアに、愚者の一灯。(篆刻:愚者の一灯)

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うろ覚えなことはネットで検索することが多いから、当然ウィキペディアにもお世話に
なる。が、ここ数日、ウィキペディアの画面に寄付を募る表示が出てくる。「非営利
組織だが、世界で5番目に大きなウェブサイトを運営するためにサーバー、スタッフ、
活動費といったコストがかかる」ことを初めて知った。表示が目ざわりで寄付すれば
消えると思って、一度かぎり、1000円にチェックを入れて「愚者の一灯」を献じたが。

すぐお礼のメールが届いた。「この一年間、287言語版におよぶ百科事典を展開し、
(中略)私たちが知識を届けたのはインド・ソーラープル出身のアクシャヤ・アイエン
ガーのような人々です。織物業が盛んなこの小さな町で育った彼はウィキペディアを
一番の教科書として学習してきました。この地域の学生には、本はほとんどなかった
ものの、携帯からはインターネットに繋げることができ、ウィキペディアがとても役立ち
ました。彼はインドで大学を卒業し、今ではアメリカでソフトウェアエンジニアとして
働いています。彼は自分の知識の半分はウィキペディアのおかげだと考えています」

だからといって、いまでも寄付を募る画面は消えないのだが。ところで検索といえば、
「篆刻」で検索するとグーグル、ヤフーとも『注文篆刻の楽篆堂』が約358万件の
うちでウィキペディアの次、2位になっている! ついでにコピット自慢しちゃいました。

目まい、ふたつ。(篆刻:目)

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私の日曜の朝は優雅なのだ。ベッドで横になりながらコーヒーを飲み、タバコを喫う。
ところが一昨日は驚いた。上半身を起こした途端、視野がぐるぐると回った。とても
タバコどころではない。その日は安静にしたら目まいは無くなり、食欲も戻ったけれど。
今朝もかすかに気持ちが悪いので病院に行った。病名は良性発作性頭位めまい症。
何かの拍子で耳石が動いて回転性の目まいが起こるという。脳が原因の目まいなら、
1日経っても治らず、頭痛、嘔吐があるという。気休め程度ですがと3日分の目まいの
薬を処方されて、一件落着。サッカーの沢選手もこのBPPVだった、とネットにあった。

目まいはもうひとつ。集団的自衛権を認める閣議決定だ。数を頼みに暴走する自民党
と連立にしがみつく公明党の茶番で憲法がボロボロにされる日なのだ。こればかりは
片山虎之助の「60年70年かけて、国会の議論の中で今の解釈を確立した。9条を
頂点に自衛隊法やPKO法などが出来て、一種の慣習法の体系になった。これを根っこ
から変える。戦後の安全保障政策の重大な変更です。もっと手間をかけて国民世論を
糾合し、与野党を入れて国会で徹底的に議論して、国民の7~8割がまあ仕方がない
となるまでやらないと、国民の合意と国際的な理解がなければ持ちませんよ。」という
言葉が正論だろう。憲法改正の国民投票をしないのなら、私はネットで、NOを一票。

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