2017年12月

アスナロは、よろこんでいるか。(篆刻:木)

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以前、奈良公園のホテル建設反対に賛同した“Change.org”で、世界一のクリスマス
ツリーPROJECTを知って、唖然とした。富山県氷見市の樹齢約150年のアスナロを
神戸メリケンパークで、クリスマスツリーにするという。なぜ、そんなことをするのか。

生きた木では世界一だとか、阪神淡路震災の鎮魂だとか、生田神社の鳥居にする
予定だとか、フェリシモが木のグッズを販売予定(その後中止)だとか、ワイヤーに
付けたプレートの数でギネス記録を狙うとか、とにかく意図や動機が支離滅裂なのだ。

発案者の西畠清順氏はプラントハンターで、樹木のプロ。昨夜のTBS「情熱大陸」が
20周年記念番組としてこの木を選ぶ段階から記録していたから、番組企画というのが
丸見えだった。「人の心に植物を植えつけたい」「信じているのは植物の力だ」「命の
大切さを伝えたい」「大きな存在感を多くの人に伝えたい」。彼が言葉を重ねるたびに
やっていることとの矛盾が大きくなる。会場では多くの人が感動しているようだが、
“Change.org”では中止を求める人が2万人を超えた。何事にも賛否はあるだろうが。
私が知りたいのは、この巨大な植木鉢に入ったアスナロは生きているのか死んでいる
のかだ。もっと知りたいのは、海の寒風に吹かれながら、この木がよろこんでいるか
悲しんでいるか。葉加瀬太郎の後ろでライトアップされた木は泣いているように見えた。
 

創造は、思いつき。(篆刻:壮馬&ピアノ)

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五風舎の個展では「素晴らしいですね」と言ってくださる方もいて、そんな時は「いえ、
思いつきばかりで」とお答えしたのだけれど。大映京都撮影所の名録音技師だった
故・大谷巌さんが「芸術っていうのは、その場その場の思いつきだ」と言っていたと
毎日新聞で読んで、やっぱり!と膝を叩いた。私の篆刻が芸術とは言わないけれど。

篆刻は、ピアノの演奏・教育をされる方からの「ピアノと姓名を」とのご希望だったが、
名前だけの方がすっきりするのではと名字は入れないことにした。ところが、実際に
デザインしてみるとピアノのへこみが気になるし、もったいない。漢字では重いし邪魔
だけれど、カタカナなら入りそうと思いついた。書いてみたら縦の線が音符になりそう
だと、また思いついた。その思いつきをラフにして見ていただくと、「発想豊かなデザ
インですね!個性的で、遊び心があります!この案で進めてください。」とお許しが出た
ので、精度を上げてフィニッシュにかかった次第。思いつきで、こんな篆刻になりました。

思いつきといえばその場しのぎに聞こえるけれど、経験を重ねるうちに増えるアイデア
の抽斗(ひきだし)ではないか。莫山先生から聞いた「中国の篆刻家が弟子入りを頼ん
だら、師はただ空箱を突き出した。これに彫った石屑が溜まったら、またおいで。」という
話を思い出した。四の五の言わず、ただ彫る。その経験から思いつきは生まれる、はず。

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