生きもの

アリには、驚いた。(篆刻:蟻)

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宮本武蔵は仇討に行く娘に、「その場にアリがいたら勝てる」と言ったそうだ。アリは
どこにでもいるが、冷静沈着でなければ小さなアリの存在も動きも見えないからだ。

先日、裏の坂に卯の花が散っていたのだが、そこから2メートルも上に、その花びらが
かたまって山のようになっている。そのそばにはアリの巣穴がある。目を凝らすと、アリが
花びらをそこに運んでいるのだが、山まで運ぶアリと山から穴に運ぶアリが別のようで、
中継基地をはさんで分業しているらしい。その後、雨が降って、花びらの山も腐ったように
なったが、雨上がりには花びらでなく棒状の花芯を、中継せずダイレクトに巣穴に運び
はじめた。そして今朝は、枯れた花びらを運んでいて、花芯のついた花びらも運ばれて
いた。アリが花びらや花芯を餌として貯蔵するのは、それほど不思議とも思わないけれど、
中継基地を作り、そこをはさんで2つのグループが分業している、その知恵には驚いた。

折しも熊谷守一の映画「モリのいる場所」が公開されている。熊谷は庭でアリを飽きずに
観察して、どの足からか歩き出すかを知っていたという。アリが中継基地を作ることだって
知っていただろうか。東京・板橋の熊谷守一美術館「ギャラリー榧」で個展をしてから、もう
8年がたった。熊谷の眼は慈愛にあふれているが山崎努は鋭すぎるし、樹木希林も鼻に
つくから映画は観ずに、アリの方は見続けようと思う。そうそう、熊谷は篆刻も自作した。

アスナロは、よろこんでいるか。(篆刻:木)

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以前、奈良公園のホテル建設反対に賛同した“Change.org”で、世界一のクリスマス
ツリーPROJECTを知って、唖然とした。富山県氷見市の樹齢約150年のアスナロを
神戸メリケンパークで、クリスマスツリーにするという。なぜ、そんなことをするのか。

生きた木では世界一だとか、阪神淡路震災の鎮魂だとか、生田神社の鳥居にする
予定だとか、フェリシモが木のグッズを販売予定(その後中止)だとか、ワイヤーに
付けたプレートの数でギネス記録を狙うとか、とにかく意図や動機が支離滅裂なのだ。

発案者の西畠清順氏はプラントハンターで、樹木のプロ。昨夜のTBS「情熱大陸」が
20周年記念番組としてこの木を選ぶ段階から記録していたから、番組企画というのが
丸見えだった。「人の心に植物を植えつけたい」「信じているのは植物の力だ」「命の
大切さを伝えたい」「大きな存在感を多くの人に伝えたい」。彼が言葉を重ねるたびに
やっていることとの矛盾が大きくなる。会場では多くの人が感動しているようだが、
“Change.org”では中止を求める人が2万人を超えた。何事にも賛否はあるだろうが。
私が知りたいのは、この巨大な植木鉢に入ったアスナロは生きているのか死んでいる
のかだ。もっと知りたいのは、海の寒風に吹かれながら、この木がよろこんでいるか
悲しんでいるか。葉加瀬太郎の後ろでライトアップされた木は泣いているように見えた。
 

ムカデ、憎し。(篆刻:百足)

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数年前、インド人がこの田舎家に来たとき、しきりに家の中にヘビが入ってこないかと
心配していた。片言で「ヘビは入って来ない」と言えたが、「ムカデは家にも来る」とは
英語が判らないので言わなかった。いまになって調べてみたら“centipede”だそうだ。

先月21日の夕方、少し草を刈っておこうと思い作業着を着て、ムカデが入っていてはと
念入りに長靴を叩き、軍手に右手を入れたらチクッときた。手を抜いたら10センチもある
ムカデが土間に落ちて、とっさに踏んで殺したのだが。見るみるうちに人差し指が腫れて
きた。ステロイド軟膏を塗ったが、指はズキズキ痛いし、手の甲から手首の下まで腫れ
てきた。眠れないほどではなかったが微熱もあるので、朝病院に行った。ムカデの毒消し
がある訳もないので、結局はステロイドの内服薬と軟膏だけ。翌々日の再診では水ぶくれ
の水を抜いただけ。それから1週間後には腫れも引いたので薬は要らないでしょうで終了。

マムシの毒には血清があるのに、ムカデはステロイド一本やりの対症療法。ムカデをゴマ油
に漬けたムカデ油がステロイド軟膏より効いたと話したが「気のせいでしょう、内服薬も飲ん
でいるから」と聞く耳を持たない。医者の頑固さを非難しても仕方ないから、こっちがムカデに
刺されないように気をつけるしかない。ムカデ、マムシ、毒毛虫と怖いものには事欠かないが
なお余りある自然の恵みをいただいているのだから、ありがたいと思わなければ罰が当たる。

真冬のダニ。(篆刻:大丈夫)

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まさか真冬にダニがいるとは思わなかったが。去年の12月、剪定したサザンカを
片付けて燃やした夜。風呂で体を洗ったとき、右のくるぶしの少し上で小指の爪の
半分ほどの肉がめくれていた。枝が当たった傷でも痛くないことはある。つまんだら
すぐ剥がれたが、それは血を吸って大きくなったダニだった。真冬の外の仕事だから
ズボン下をはいて、靴下も厚めだったが、どうしてもぐり込んだものか。ティッシュで
くるんで、翌日見れば、まだ生きているから、一応写真を撮ってから殺したのだが。

それから、もう8ヶ月以上。その部分がときどき痒くなる。患部をよけて、周囲を掻く
のだが、だんだん10円玉大になり、500円玉大へと大きくなった。最近は液が浸み
出してベタついたり、それが乾いてパリパリになったりする。9月に入ってもそんな
状態なので、いよいよ皮膚科に行った。先生は「そのダニが翌日も生きていたなら
口が体には残らなかったはず。無理に取ると口の一部が体内に残って、ダニも死ぬ。
患部を見るかぎりは単に湿疹が悪化しただけのようなので、塗り薬で治そう。皮膚が
正常になったら改めて検査する」という。処方されたステロイドは市販のものより少し
強いようで、塗って絆創膏を貼ったら、痒みもなく、皮膚も回復しつつある。大丈夫か
とも思うのだけれど、8ヶ月も痒みが続いたのは尋常ではない。やはりダニ恐るべし。

洗熊城を攻める。(篆刻:攻)

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ツバメはもう来なくなったので、巣を取って6つの卵と一緒にダンダンの横に埋めた。
不細工なトゲトゲシートも外した。その後アライグマは出没しないけれど、居場所の
目星はついているから、そこを根こそぎにしなければ、と隣のOさんと話が一致した。

アライグマの棲み家らしい小屋はOさんの畑の下で、昔は人が住んでいたのだが
いまはジクという細い竹に囲まれて近寄ることも出来ない。そこに向うアライグマの
足跡もあったから、Oさんのミニ・ユンボの出番となった。細いとはいえ竹が密集して
いるから草刈り機ではラチがあかないが、さすが重機の威力はすごい。竹を根こそぎ
倒し、押しよけながら進んでいく。(アメリカも沖縄の森林をこうしてなぎ倒して滑走路を
造ったのだろう。) それでも2時間近くかかって、やっと小屋が見えた。小屋の回りは
排水が悪く湿っているので、竹は生えていない。しかし、重い重機はぬかるみに入ると
動けないから、私が小屋を調べに行く。重機の音に驚いて、アライグマのファミリーが
飛び出すのではとカメラも構えていたのだが。中は荒れ果てているが獣が棲んでいる
気配はまったくない。小屋を壊すつもりだったが重機が沈んだら大変なので、そのまま
撤退した。アライグマの城攻めは空振りに終わったが、ではどこに棲んでいるのか。

謎は残るが、もし追い出してもどこかの家の屋根裏にでも棲まれたら困るのだし・・・

ダンダンの点滴。(篆刻:滴)

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卵6つを生んだ燕のメスが殺されたのは、どうもアライグマらしい。以来オスは毎日
電線にとまったり、巣をのぞいたりするが温めないから、卵は死んだだろう。それと
前後して、猫のカモが口内炎で寝たきり状態だったが、食欲はあったので回復した。

ところが猫のダンダンも口内炎らしく、よだれが出て、口臭もひどいので病院に行くと
歯茎が化膿して、奥歯がぐらついているという。麻酔をかけて歯を抜き、血膿もとった
のだが。ペースト状の餌を無理に食べさせようとしたのが痛かったのか、我々を避けて
家の外のアケビのカゴなどで寝ていたが、そのうち姿を消してしまった。庭はもちろん
向いの川の方まで探したが、数日行方不明が続いた。運よく家の下の田んぼにある
ワラ小屋にいたのを見つけて離れに入れたが、餌は食べず、ガリガリに痩せている。

それで、月曜から毎日病院で点滴をし、抗生物質の注射もしてもらっている。それでも
口から食べないと体力もつかないから、病院で猫用の首だけ出る袋を借りて、無理に
注射器でペーストの餌を食べさせている。篆刻教室でも花の会でも、食事やお茶に
なると誰彼となく側にすり寄っていた、甘えん坊、食いしん坊のダンダンとは思えない
姿なのだが。いままで「胃ろう」までして人を延命させるのには抵抗があったけれど、
口に無理に餌を押し込んででも、ダンダンには元気になってほしいと、願うばかりだ。

巣街化調整区域。(篆刻:巣)

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ツバメの生き残ったヒナが巣立って、ホッとした。また来られては、と古い巣を落とした
のだが。翌朝、別のツバメが梁の裏の3ヶ所で同時に土を運んで巣づくりをはじめた。

ヘビ、カラス、アライグマまで巣を襲ったのだから、ここは危険すぎる。もう死んだヒナは
見たくない。「巣街化調整区域」にして巣づくりを阻止することにした。まずCDを吊った
がダメ。「ヘビだぞー」とベルトを下げたが平気。視覚が駄目なら物理的に土が付かない
ようにサランラップを縁側と玄関の梁に貼ったら、効果があって諦めたのだが。翌朝、
梁のラップのない表で作業をはじめている。かくなる上はと厚いビニールのフィルムで
梁の裏表をくるむ。このツルツル作戦は成功に見えたが。また翌朝、縁側と玄関の間の
壁の上で巣をつくりはじめた。そこにもビニールを貼ったが、このイタチごっこを続ける訳
にもいかない。抜本的な方法はとネットで調べたら、「キラキラの防鳥テープは効果的」と
あった。金色のテープがあったから、縁側、玄関の天井の真ん中に吊ると、風に吹かれて
キラキラ。ツバメはヒサシから中に入らずUターンする。やっとこれで解決、と思いきや。

翌朝、梁と壁のビニールの重なりの三角の穴に、もうたっぷり土を入れている。夕方は
諦めるが、朝には別の一手を繰り出すツバメの執念に負けた。「巣街化共生」に変更、
ビニールの下を板で支えて援護する。ヘビ、カラス、アライグマとの戦いを、いざ再開だ。

命は、繋がった。(篆刻:繋)

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ツバメのヒナ5羽は親が餌を運んで、順調に育っていた。ところが金曜の夜、猫の
サバとタイがツバメのヒナを3羽くわえて来た。1羽はお腹をかじられているが、猫は
こんな噛み方をしない。巣を見たら、崩れた中に1羽だけ残っていた。巣の下の柱に
アライグマの深い爪痕があった。親はいない。ヒナを守るために蚊取線香を焚いた。

翌朝、親は遠巻きに警戒していたが、やがて餌を運びはじめたので、ひと安心した。
4時頃、草刈りが一段落して、カミサンと遅いコーヒーを飲みながら、巣を見上げて
「しかし、親が前ほど真剣に餌をやっていないな」と言ったその時。ヒナが巣を飛び
出した。飛ぶというより落ちるように、それでも離れの玄関の前の南天の花の房に
とまった。親はすぐ来て、そばの枝にとまったり、餌をやったりする。サバとタイが
気づいたので、叱ったり、追い払ったりしながら、見守ること6時まで2時間。暗く
なったらどうするか、心配をはじめた頃。ヒナは少し高い離れの屋根に飛び上った。
親も近づく。次は、さらに高い母屋のひさしに飛んだ。親もそばに行くが、しばらく
して飛び去る。残されたヒナは、ついに親を追うように、空高く飛び上った。よかった!

親が餌を減らしたのは危険なここから巣立たせるためだった。まだ産毛が残るヒナも
餌をもらううちに力を蓄えた。すごいなあ、生きものは。そうして命が繋がったのだ。

燕に、泣き笑い。(篆刻:燕)

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ツバメを見たのは去年より10日ほど遅かった。何羽かが3つある巣の品定めを
して、やっと番(つがい)が巣に入った頃、縁側から部屋に入った1羽がガラスに
ぶつかって畳の上に落ちた。私が縁側でタバコを喫っていたから、すぐ手の中に
保護できた。しばらくしたら、目をあけ、首も動かしたから、篆刻教室の生徒さんに
写真を撮ってもらった。空に放りあげたら、元気に飛んでいって、ひと安心。巣には
相変わらず2羽が出入りしていたから、事なきをえたと言っていいだろう。うれしい
話だから、フェイスブックに載せて、たくさん「いいね」やハートをいただいたのだが。

翌朝、猫のサバがツバメをくわえて入ってきた。追いかけて口からは離したのだが、
死んでいた。猫が跳びつけるほどに低く飛んだのだろう。それ以来、ツバメは入れ
替わりに何羽も飛んできて、物干し棹や看板にとまるのだが巣に入るのがいない。

死んだのは番の片方だったようだ。伴侶を無くしたツバメはどうなるのか。それでも、
また他の番が巣に入り、卵を産むだろう。卵は蛇に狙われる。卵が孵っても、ヒナは
カラスに狙われる。ヘビ除けに蚊取り線香を焚き、カラス除けに糸を張るが、去年は
2番目のヒナがこつ然と消えていた。毎年ツバメが来てくれるのはうれしいことだが
7月までこんな泣き笑いが続く。生も死もひっくるめて、これもまた風流、と考えよう。

アライグマ、闖入す。(写真:爪痕)

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写真はアライグマの爪痕。家の外壁には何か所かあるが、これは家の中のもの。
母屋と離れの間の土間には庭に出る引き戸があるのだが、猫が出入りする穴を
開けている。私が寝る前にフタを締めるのだが、その夜はそろそろ締めようかと
思った頃、そこでゴトゴトと音がした。いちばん大きい(猫の)カモが入ったかと
行ったが、カモはいないのでフタを閉めて、母屋に行きかかったら、猫穴のあたりで
ガリガリという音。さてはアライグマを閉めこんでしまったかと思った時、胴の長さ
50センチもの大きなアライグマが足もとをすり抜け、母屋の座敷を駆けずり廻った。

どこにも出口がないので、また猫穴に戻って、ガリガリやる。追い込んで反撃され
たり、引っ掻かれたりしたら大怪我をするから、裏の戸を開けて逃げ道をつくった。
外の空気が入ったのを察知して飛び出ていき、爪痕の置き土産で一件落着したが。

カミサンは以前、ガレージの前でファミリーを見かけている。隣の空き地の朽ちた
プレハブ小屋に住んでいるらしい。屋根裏に住みつかれて、フンをされたり、子を
産んだりした話も聞くが、我が家は何とか水際で撃退している。イノシシ、サルは
珍しくないし、狭川地区内ではシカの食害も出はじめた。若者は出て行き人間は
減る一方で、有害動物だけが増え続ける。自然は豊かだけど、悩みも多いです。

 

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