怖いけど、飛ぶ。(篆刻:飛)

飛
「飛」は、鳥が羽を広げて飛ぶ形。ツバメが、我が家の縁側に飛来している。 手鏡で巣をのぞけば、卵は7つ。細身の体に7つは重い。まず入らないから、 2組の夫婦の寄り合い所帯と推察する。出たり入ったり、温めたりと、 めまぐるしく往来して、聞き取り調査もままならない。ツバメの来る家はめでたい、 というが、それが必ずしも正しくないことは、我が家が証明している。 卵の間は、まだましだが、ヒナになると、ツバメはほんとに忙しい。 ひっきりなしに餌を運ぶ。それを狙って、我が家の猫が、また忙しい。 低空飛行をすれば、ひょいと猫に跳びつかれる。ヒナがほどよく育てば、 蛇がそれを狙う。蛇除けに我が家は、巣の下で蚊取り線香を絶やさない。 7羽も生まれると、要領の良し悪しで育ち方にかなりの差が出てくる。 弱いヒナは、巣からはじき落とされることもある。巣立ちのときにも、 飛べずに地を這うヤツがいる。その時はどこからか数十羽が現れて旋回し、 飛び立つまで守り続ける。かくして、ツバメの子育ては、一族こぞって命がけ。 私も、あさって90を過ぎた母を見舞いに、何年ぶりかで飛行機に乗る。 JALは怖いからANAにした。人間だって、空を飛ぶのは命がけなんだぞ。
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