水のしずくで、石を彫る。(篆刻:滴水)

滴水
「三游会(さんゆうかい)」が、終わって、もう1週間。テーマは「滴(しずく)」。 近鉄奈良駅から徒歩約10分、博物館の向かい、知事公舎の隣という恵まれた場所。 かつては興福寺の建物だった旧世尊院という江戸時代の建物を会場に、 野の花と遊ぶ「花の会」と共同展を続けて、もう9回目になった。 陶芸の尾崎円哉さんが現在休止中なので、正確には二游会なのだけれど。 絵巻にあるような蔀(しとみ)戸や杉の板戸。障子越しの柔らかな光。黒光りする床。 伝統的な日本建築と野の花、篆刻の相性が良いからだろうか、 毎回の開催を心待ちにしてくださる方も多い。春、翌年は秋、その次の年は休んで、 また春という順で、今年は春の年なのだが、緑濃い初夏にチャレンジ。 3日間で800人を超えるご来場をいただき、普段SOHOの身は目まいがするほど。 さて、「滴水(てきすい)」は案内のはがきに印刷した「滴」の姉妹作。 これを含めて印の数は30顆、額装して25点。ただ闇雲に3週間で一気に彫ったので、 何の自覚もないけれど、三游会の常連の方からは新境地、飛躍というお声がチラホラ。 篆刻をよくご存知の方には、型にはまらない自由さを「可」としていただいた、ようだ。 石を水滴でうがつような歩みだけれど、この篆刻でよかったのだとうれしかった、です。
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