
もう、買うのはやめよう、読むのはやめよう、と思いながら、受賞会見をニュースで
何回も見たから、ついつい文芸春秋を買ってしまった。やっぱり、ガッカリだった。
芥川賞受賞作を読んだといっても、ここ10年で12作ほどだから、偉そうなことは
言えないが、それなりに”文学”を感じたのは2001年の玄侑宗久『中陰の花』まで。
『蛇にピアス』、『蹴りたい背中』は、ああそうですか。『介護入門』は、ご苦労様です。
『乳と卵』は、へえー。『ポストライムの舟』、『時が滲む朝』は作文。『乙女の密告』は、
そうなのー。『きことわ』は退屈。『苦役列車』はどこが苦役なのと、うんざりの行列。
そして今回の『共喰い』は、重厚を装ったエログロで、ラストの生理用品のくだりは
噴飯もの。強いて言えば『道化師の蝶』が中島敦を思わせる世界観を持っていたが。
石原慎太郎の選評、「言葉の綾とりみたいな出来の悪いゲームに付き合わされる
読者は気の毒というよりない」に同感。毎回失望の弁を書き連ねた気の毒な選考
委員としては、これを機に辞めるほかないだろう。まあ、しかし、たかが小説だから、
書くのも勝手、読むのも勝手。どちらも酔狂と思えば、腹の立つこともないのだから。
さて篆刻は「酔狂」。3月30日?4月1日、奈良での三游会に出す作品のひとつだが、
これまた枠にヒラヒラまで刻んで、酔狂以外の何物でもない。いや、下手の横好きか?