家の、希望。(篆刻:希望)

2016728163318.gif いまにして思えば、あれがバブルそのものだったのだろう。20年以上前に億ション ならぬ「億邸」という不動産の販促広告をやった。関西の主な高級住宅地に7つの 敷地を用意し、関西を代表する建築家7人を選び、自由に家を建ててもらう企画。 建築家全員に同じ質問をした。「あなたは、この家に住む人の住みやすさとあなたの 作品性のどちらを優先させますか?」 7人が迷わず、「作品性だ」と言い切った。 さて、伊東豊雄といえば建築門外漢の私でも知っている。「アルミの家」で注目され、 「ミキモト銀座」など前衛的な造形で話題作を連発している。東北の高台移転でも 思い切った構想を提案する番組を見たが。仙台市内のプレハブ仮設住宅の脇に 「みんなの家」と呼ぶ簡素な小屋を建てたという。和室は4畳半のみ。24畳ほどの 大部分が土間で、大きな木製テーブルと薪ストーブの回りに仮設の住民たちが集う。 才能や手柄を競うことをやめて、住民の声を聞いたら、民家のような建物が出来た。 仮設住宅はお役所仕事の典型で、前衛建築はその対極。その真ん中に、昔からある “民家の心”が生まれたのは、大いによろこぶべきことだ。千年に1度という地震と 津波でやっと気付いたのかという憎まれ口は止めよう。いま何かが始まろうとして いるのだから、と古民家に住みながら思う。篆刻は、三游会に出品予定の「希望」。
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