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いまにして思えば、あれがバブルそのものだったのだろう。20年以上前に億ション
ならぬ「億邸」という不動産の販促広告をやった。関西の主な高級住宅地に7つの
敷地を用意し、関西を代表する建築家7人を選び、自由に家を建ててもらう企画。
建築家全員に同じ質問をした。「あなたは、この家に住む人の住みやすさとあなたの
作品性のどちらを優先させますか?」 7人が迷わず、「作品性だ」と言い切った。
さて、伊東豊雄といえば建築門外漢の私でも知っている。「アルミの家」で注目され、
「ミキモト銀座」など前衛的な造形で話題作を連発している。東北の高台移転でも
思い切った構想を提案する番組を見たが。仙台市内のプレハブ仮設住宅の脇に
「みんなの家」と呼ぶ簡素な小屋を建てたという。和室は4畳半のみ。24畳ほどの
大部分が土間で、大きな木製テーブルと薪ストーブの回りに仮設の住民たちが集う。
才能や手柄を競うことをやめて、住民の声を聞いたら、民家のような建物が出来た。
仮設住宅はお役所仕事の典型で、前衛建築はその対極。その真ん中に、昔からある
“民家の心”が生まれたのは、大いによろこぶべきことだ。千年に1度という地震と
津波でやっと気付いたのかという憎まれ口は止めよう。いま何かが始まろうとして
いるのだから、と古民家に住みながら思う。篆刻は、三游会に出品予定の「希望」。