日本の、寒い話。(篆刻:寒)

2016728162837.gif 最近は、朝まで風呂桶に水道をチョロチョロと出し続けている。石油給湯器は凍結 防止のために、ときどき風呂の水を循環させてくれるのだが、取説により安全の ためと書いてあったからだ。ところが1月29日、福島第一原発では汚染水浄化 装置や冷却装置の14ヵ所で水漏れが見つかったという。この影響で4号機の冷却が 2時間弱停止した。「東電は気温の低下で水が凍結して膨張し、配管のつなぎ目が 緩んだり破損したのが原因とみている。主要な設備の配管に保温材を巻く対策を 進めているが今回漏水が見つかったのは、まだ作業ができていない場所だった。」 奈良県北東部で並みの人間がやっている凍結防止が、東北・福島の原発でできて いない。仮設住宅でも、いま壁や床に大慌てで断熱材を張っているという。たしか 避難所の目の前に仮設住宅が出来上がっているのに、仮設住宅の協会の検査が 済まないからという理由で、うんざりするほど入居を待たされたのではなかったか。 検査とはこの仮設で人並みの暮らしができるかではないのか。背筋が寒くなる話だ。 古代中国でうまれた「寒」という文字は、屋内の人が敷物の上で草を積んで寒さを防ぐ ことだというのに。いまこの国では寒ささえも、まともに防げない。いま日本を覆って いる閉塞感の根源は、「こうすれば、こうなる」という想像力のあきれるほどの欠如だ。
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