一本の草に、よろずの真理あり。(篆刻:一草万理)

一草万理
「一草万理」は、イチグサ・マリさんの名前を彫ったのではない。いっそうばんり。 神さまは、あちこちでかしましいから、1回でお引取り願いました。 一本の草に、八百万(やおよろず)の宇宙の真理が込められている、どうだ、 すごいだろう、という意味。これも福岡さんぽいな。般若心経には、お釈迦様の 教えのすべてが凝縮されているそうだから、草は般若心経の親戚なのである。 かといって、この篆刻がすごい、という訳ではない。 強いていえば、「一草」で単入法を試みている。普通文字を白く彫るのには、 一本の線を往復して彫る(双入法)のだが、単入法だと片道一回だけ。 したがって、片側はシャープに、その反対側がパリパリ欠けて、凸凹になる。 だからといって、これが単入法の新境地を拓いた、訳でもない。 この単入法を駆使して、一世を風靡した作家に斉白石という方がいる。 先の徐先生の作品が華麗さの極致とすれば、この斉先生は無骨、ぶっきら棒の 最たるもの。それがモダンだと、近年また人気のようだが、私は好きになれない。 何かで「斉先生は、お金に執着しすぎる」という話を読んだから、かな。 篆刻も、また人なり。「で、お前は、どうなのよ」という声に、私は貝、いや草になる。
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