ただ、生きて在れ!(篆刻:LET IT BE)

LET IT BE
「なんにも書くな。なんにも読むな。なんにも思ふな。ただ、生きて在れ!」 先日酔った勢いで買った太宰治の古本をたまたま開いたら、『めくら草紙』という 短編の冒頭にこんなことが書いてあって、「え、私のブログへのコメントかな」という 妙な感覚になった。行きがかりで、その全集第一巻「晩年」を拾い読みしたけれど。 読ませる力に引きずられてしまうが、どうも私は太宰を好きになれない。 吉本隆明さんは、太宰を「好き嫌いだけで判断してはいけない大変な人」と おっしゃるけれど。自殺未遂を何回も重ねる。そのたびに女性を道連れにする。 往生際が悪い。死ぬ、死にたい、死んでやると書き続けて、それを生業にするのは、 狼少年より悪質な気もする。そういえば芥川賞がとれないのを根に持っていたと 読んだことまで思い出して、ますます好きになれない。体質的なことかもしれない。 マクドナルドの藤田田さんから、「太宰とは、入水の前夜にバーで一緒だった」という 話は聞いた。田さんは、自殺を明日に控えた態度ではないと、足をすべらせての 事故死説をとっていたらしいが、まあ、田さんも人が悪い。巧言令色が鉄の原則の 太宰が、それでは格好がつかないけれど、真実は闇、いや水の中。 篆刻は、「LET IT BE」。私の好きなビートルズによる「ただ、生きて在れ!」
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