花か、華か。(篆刻:花)

花
「年々歳々花相似たり」とは、まるでこの季節の枕言葉。花の形は変わらないが、 よく見れば「歳々年々庭同じからず」。まず、今年の我が家の桜は花が少ない。 冬の寒さが足りなかったか、去年調子に乗って、今年はひと休みなのか。 ひと株植えた一輪草の仲間・空色ヤブイチゲは、天晴れにも5株に増えて、 すべてが花を咲かせてくれた。カタクリは、株を増やしたが、花は一輪だった。 さて、劉希夷(りゅうきい)という人の「年々歳々花相似たり」の漢詩。 続きは「歳々年々人同じからず。」 「言を寄す 全盛の紅顔子、まさに憐れむべし 半死の白頭翁。」。高橋睦郎さんが読み下すと、こうなるそうだ。「くる年くる年 花は同じく若々しいが、めぐる歳めぐる歳 人は様変わり年寄っていく。聞いてくれ、 いまを盛りの若い君たち、この死にかけの白髪爺をふさわしく憐れんでくれ。」 数年前、京都の寺町でお見かけした高橋さんの頭は白に近かったけれど、 私の頭もそこそこの白さになった。篆刻は「花」。正字は花の象形の「華」であって、 花は音の化を当てた比較的新しい文字。朝夕で、陽の当たり加減で、 また見る人の心の持ちようで変化する花には、「化」の方がふさわしい。 散る桜 残る桜も 散る桜。人も、また。
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