心が、生まれた時。(篆刻:心)

心
吉田脩二先生の年賀状に「2月に本が文藝春秋から出ます」とあったので、 何回かアマゾンで検索したけれど。2月も最後の29日の新聞広告で見つけた。 書名は、『ヒトとサルのあいだ 精神(こころ)はいつ生まれたのか』。 ちょうど福岡伸一氏の『生物と無生物のあいだ』を読み終わりかかっていたが、 奈良へ出る用があったので、本屋に行った。その本は、確かにあった。 『生物と無生物のあいだ』の太い帯には「科学ミステリー」とあって、 『ヒトとサルのあいだ』の帯も太く、「科学サスペンス」とある。明らかに出版社は ベストセラーの『生物と無生物のあいだ』を強く意識したようだし、 吉田先生もしぶしぶそれに押し切られたのではないか、と勘ぐってしまったが。 そんなことをしなくとも、『ヒトとサルのあいだ』は『生物と・・・』を凌駕している。 なぜか。吉田先生は「人類の歴史はまだまだ新しく展開される可能性を秘めている かもしれないのです。」と書き終わる。私も心からそう信じた。目頭が熱くなった。 数時間後、その興奮がおさまって、『生物と・・・』の最後の数ページを読んだ。 福岡氏のエンディングは、「結局、私たちが明らかにできたことは、生命を機械的に、 操作的に扱うことの不可能性だったのである。」 これは、単なる報告書でしかない。
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