篆刻・般若心経の「不増不減」は、徐三庚先生のそっくりさん丸出しなのだが。
松原泰道老師によれば、この「不」は無いのではなく、むしろ「超える」の意味。
現象として増や減はあるが、それにとらわれなければ、無いも同じということ。
奈良のギャラリー藍倉さんでの個展が終わって。まず、10以上の個人印を彫り、
次は篆刻・般若心経の掛軸。おふたりの注文で、印の数55、その倍を押すのだが。
雑用や電話の多い平日は、とても無理だから、土日の仕事にして。まず、土曜の
午前は、印面をきれいにして、半切の紙を下敷きにクリップでとめたりの、準備。
午後からは、いよいよ押しはじめる。寒さで硬い印泥を暖めたのに、1回押しでは
朱が薄い。押した印を持ち上げず、印矩(く)という直角定規を当てて、2度3度
重ねて押す。その日は2枚に25個を押したところで、疲労困憊。残りは、翌日に。
日曜の朝から、続きを押す。慎重に、体重を万遍なくかけて、押し続けて・・・。
17個目、定規は動いていないはずなのに、二重になって、1枚は失敗が確定。
仕方ない、残り1枚でも最後まで仕上げようと、再開。19個目を2回目に
押したとき、印が横になっていて、またもや失敗。2日間の作業が、水の泡に。
増さず減らずどころか、ゼロに消滅。ああ、般若心経が、お釈迦になった!
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増さず、減らず。(篆刻:不増不減)
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