お湯、ぬるま湯、水。(篆刻:水)

水(篆彩) 前回のP&Gの洗剤というのは、「全温度チアー」という妙な商品名だった。 もう30年以上前のことで、すでに市場から消えているから書かせてもらうが。 「オール・テンパラチャー」の直訳で、「お湯、ぬるま湯、水、どんな温度でも きれいになります。全温度チアー」が、最後の決まり文句だった。15秒CMが 主流の時代なのに、これが時間をくうから、30秒にせざるを得なかった。 しかし、こんな昔誰が洗濯にお湯を使っているのか。我々代理店はもちろん P&Gの日本人も不思議に思った。しかし、P&Gのマーケティングは、いまでも 世界最先端。その調査では、日本の主婦の多くがお湯を使っているというのだ。 ちょっと妙なスライス・オブ・ライフで注目を集めたから、花王やライオンの洗剤を 抜いて瞬間風速で1位になったりしたが。ある時、「お湯の不思議」が判明した。 お湯はお湯でも、日本の主婦が使っているお湯とは「お風呂の残り湯」だった。 残り湯も英語に直せば「湯」だが、冬の朝なら、残り湯は冷たい水になっている。 ただ、P&Gがすごいのは落語のような笑い話があっても、「お湯、ぬるま湯、水」の 決まり文句をやめなかったこと。失敗が明白になるまで、戦略を変えないのだ。 篆刻は、篆彩と名づけた「水」。生命の源だが、人間を困らせることも、また多い。
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