3万2000?2万6000年前と推定される最古級の亜麻糸が、グルジアの
洞窟で発見されたという。狩猟採集生活だった後期旧石器時代のもので、
植物の根の汁で黒、灰、青緑ばかりか、赤、黄に染めた糸もあったそうだ。
話はかわって、京都・西本願寺御影堂の平成大修復の番組で見た糸は、
和紙の紙漉きに使う簀(すのこ)の竹ひごを編む特殊な絹糸。漉き桁(けた)の
激しい動きに耐える強靭さが必要。まず生糸を6本束ね、古い”糸より機”の
大きな動輪で、よりをかける。その糸を4本束ねて、よりを反対にかける。
夏や冬は水分を足さないと切れる。よりにバラツキがあると、編む簀がねじれる。
この絹糸を作れるのは、日本で森島晶子さんひとり。岐阜県美濃市にある
和紙の里公民館を借りて絹糸を作る。夫と地元の職人から技術を受け継いだが、
採算がとれない。夫は公務員になることで家計を支え、糸作りを手伝っている。
西本願寺・平成大修復の総工費は57億円(約32億円が国、京都府、京都市の
補助金)余りらしいが、日本にはこの夫婦の生計を支える、1本の糸すらないのか。
和紙の国・日本の紙漉きが、いつ切れても不思議でない細い糸で支えられている。
平成の日本の文化レベルは、旧石器時代より貧しいのではないかと、ため息。
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切れそうな、糸。(篆刻:糸)
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