怪しい、人間。(篆刻:怪)

2016427185458.gif
NHKの《歴史秘話・ヒストリア》で、明治の妖怪博士・井上円了を見た。現・東洋大学
の創設者で、妖怪や迷信を科学的に解明した痛快な学者。たとえば、数人で囲んだ
テーブルが誰かに憑いた霊によって動くという「コックリさん」は、人の潜在意識を
反映して、無意識の筋肉運動によって自分で動かす、一種の自己催眠と分析した。

大著『妖怪学』では妖怪を偽怪、誤怪、仮怪、真怪に分類する。手品やスプーン曲げ
は偽怪、ツチノコはヤマカガシだったというのは誤怪、蜃気楼や不知火などは仮怪。
真怪は科学でもなお解明しきれない事象で、自然界の森羅万象を指すというのだが。
その真怪の最たるものこそ、人間とその社会だと思わざるをえない。最近は、特に。

九州電力の社長は、第三者委員会にやらせ問題の調査を依頼し、その調査結果を
受け取りながら、政府への報告書では肝心の(自分たちに都合の悪い)部分を完全に
無視した。記者に追及されると、第三者委員会の委員長はもう委員長ではないから
だとか、見解の相違などなど、妖怪でさえ恥じて言えないようなことを平気でうそぶく。

経済界で最大の妖怪は電力会社。あらかじめ利益を確保して、原価を積上げ、料金が
決められるから、肥大するばかり。原発事故で、妖怪は息の根が止まるかと思いきや、
いくら補償が増えても倒産しない仕掛け。篆刻は、ゆがんだ心と手で土を汚す「怪」。

ページ上部へ