川が、流れる。(篆刻:川)

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奈良市の狭川地区は、狭川両町、西狭川町、狭川東町、下狭川町、広岡町だが、
そのうち下狭川町は奈良市合併の時、従来の垣内(かいと)名を通称としたので
下狭川奥町、〃川口城戸町、〃門前町、〃上町、〃中町、〃下町がある。自治
連合会もこの10町で構成されている。広岡町以外にはすべて狭川がついている。

『奈良町風土記続編(山田熊夫著、昭和54年、豊住書店刊)』では、狭川の町名は
前川をはさんで集落が発展したからというが、より正確には木津川に流れ込む前川、
安郷川、白砂川の流域にある。とにかく狭川と川は切っても切れないし、どの川も
源は春日原生林だから水はきれいで、当然うまい米がとれる。写真家の小川光三
さんからは、昔は奈良から米を買いに来る人を狙って山賊まで出たと聞いた。私が
引っ越して来た頃でも前の川にモクズガニがいたし、私の息子は白砂川に潜って
鮎を突いて遊んだ。広岡には大鰻がいたし、鯰も産卵に遡上していたと聞いた。

30年前は簡易水道だったが市の上水道になり、農業用水路に流していた家庭の
排水は下水道になった。横浜で釣ったクチボソに似た小魚はいまもいる。蛍だって
木津川に近い広岡町ほど多くはないが絶えることはない。河川の改修で護岸が
増えて風情がなくなったのは残念だが、狭川はいまも川に寄り添って暮らす町だ。

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