形容詞にも、ご用心。(篆刻:形)

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6月5日の毎日新聞に「形容詞にご用心」というコラムがあった。池澤夏樹さんが
20年以上前に原発を見学した時、広報部の文章に「固い」「丈夫な」「がんじょうな」
「厚い」という言葉が並んでいたという。そんな言葉で原発の安全神話が作られた
のだし、安保保障関連法案にも具体性のない形容詞が羅列されていて、また安保
神話を作りたいのではという話で、同感だが。「具体性のない言葉の羅列は読み手
の心理をある方向にもっていこうとする広告のコピーのようなもの。」の一節がある。

私が初めて松下電器の新聞広告のコピーを書いた時、それは事実上の実地試験
だった。「形容詞がまったく無い」ということで合格になり、その後もコピーを書くこと
になった。だから「広告のコピー」の前に「下手な」という形容詞を加えるべきだし、
そもそも広告で形容詞を並べて読者をある方向にもっていくなど、出来る訳がない。

安保法制の話に戻れば、憲法学者3人が口をそろえて憲法違反と断罪したのは
痛快だった。そのなかの一人が「政府は後方支援というが、戦争に後ろも前もない。
そういう言葉遊びは止めていただきたい」と言ったのを聞いて、溜飲が下がった。
かつて「美しい日本」がコンセプトみたいなことを言った総理だから形容詞は当然の
こと、副詞、助詞、名詞だって疑ってかからないと、日本は大変なことになるだろう。

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