アリには、驚いた。(篆刻:蟻)

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宮本武蔵は仇討に行く娘に、「その場にアリがいたら勝てる」と言ったそうだ。アリは
どこにでもいるが、冷静沈着でなければ小さなアリの存在も動きも見えないからだ。

先日、裏の坂に卯の花が散っていたのだが、そこから2メートルも上に、その花びらが
かたまって山のようになっている。そのそばにはアリの巣穴がある。目を凝らすと、アリが
花びらをそこに運んでいるのだが、山まで運ぶアリと山から穴に運ぶアリが別のようで、
中継基地をはさんで分業しているらしい。その後、雨が降って、花びらの山も腐ったように
なったが、雨上がりには花びらでなく棒状の花芯を、中継せずダイレクトに巣穴に運び
はじめた。そして今朝は、枯れた花びらを運んでいて、花芯のついた花びらも運ばれて
いた。アリが花びらや花芯を餌として貯蔵するのは、それほど不思議とも思わないけれど、
中継基地を作り、そこをはさんで2つのグループが分業している、その知恵には驚いた。

折しも熊谷守一の映画「モリのいる場所」が公開されている。熊谷は庭でアリを飽きずに
観察して、どの足からか歩き出すかを知っていたという。アリが中継基地を作ることだって
知っていただろうか。東京・板橋の熊谷守一美術館「ギャラリー榧」で個展をしてから、もう
8年がたった。熊谷の眼は慈愛にあふれているが山崎努は鋭すぎるし、樹木希林も鼻に
つくから映画は観ずに、アリの方は見続けようと思う。そうそう、熊谷は篆刻も自作した。

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