印を、鋳る。(鋳造印:楽)

202010515925.jpg

京都の泉屋博古館で「鋳物体験 ―古印をつくろう―」というワークショップがあった
ので、迷わず参加した。私が作る篆刻(印)は、蝋石に近い柔らかい石を印刀という
刃物で、直接彫るのだが、日本の古印といわれるものは、奈良~平安時代に青銅で
鋳造された印章をいう。これを低い融点の錫(すず)でつくるという、1時間半の体験。

印面の鋳型は、細かな粒子の粘土を焼いた素焼きで約25ミリ角の陶板。もうひとつの
持ち手の鋳型が当たる四角い部分の内側に、枠や文字を下書きしてから、鉄筆のような
もので丁寧に削る。彫った溝が印面の文字だから、逆文字にはしない。溝は谷型だから、
凸になったときに文字がしっかり現れるためには、かなりの深さを彫らないといけない。

出来上がった陶板の鋳型の上に、持ち手の長い鋳型(耐熱シリコン)を乗せて、ネジで
締めて密着させる。融けた錫をお玉ですくって、鋳型の上の穴から一気に注ぎ、あふれる
直前で止める。ネジを外すと陶板はすぐ離れるが、錫はシリコンの穴から押し出して、
水に入れて冷ます。印面の文字は凹凸がバラバラなので、高さが揃うまでサンドペーパー
(180番)で削る。上の印影が出来上がり。石の篆刻の文字の太さは、意識的に操作できる
が、鋳造印では成り行き任せ。鋳型の溝次第で太くなったり、細くなったり。線のエッジが
柔らかくて、温かい。来年もまた参加したい。それまでに古印らしい原稿を用意しておこう。

※「鋳造印のつくり方(写真と説明)」は、こちらをご覧ください。

ページ上部へ