万事、笑ってすませられますか。(篆刻:万事付一笑)

万事付一笑
NHKの「プロフェッショナル」という番組で、写真家・上田義彦さんの話があった。 広告代理店のディレクターに、「広告に向いていない」と決め付けられて、失意の日々。 そこに、ウイスキーの広告で作家のポートレート撮影の依頼が来る。その作家とは、 ドイツ文学者の高橋義孝先生。見るからに強面(こわもて)。互いに緊張して、 剣道でいう「居付く」という状態。いつまでもシャッターが押せない、という話だったが。 それなら上田さんに、この話をしてあげたらよかった、と思いながら見ていた。 『ある男が、狭いトイレで用を足した。拭いた紙が破れて、指にそれが付いてしまった。 さぞ臭いだろうな、と指を鼻に近付けると、これが臭いなんていうもんじゃない。 思わず指を振り払ったら、ステンレスのペーパーホルダーの角にぶつかった。 「痛っ」と叫んだ瞬間、指をしゃぶっていた。』 この話は、高橋先生から聞いたと山口瞳さんの本に書いてあったのだけれど、 それを電車の中で読んだ私は、笑いが止まらず困ったのなんの。あの気難しそうな 高橋先生、実はこのテの話が大好きと、撮影前に聞いていたら、あの傑作は生まれず、 上田さんも無名のままだっただろうか。篆刻は、昔の習作「万事、一笑に付す」。 そこで、質問です。この15行の文中に、「付」は何個あるでしょう。
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