6:これが、横書き用の名前の篆刻。

20141013133132.jpgのサムネイル画像のサムネイル画像「敬志(20×20ミリを拡大)」
最近はさすがに見ないが、トラックの荷台に書かれた社名が左側は「〇△運送」なのに右側が「送運△〇」となっているのがあった。車は走るものだから社名も車の頭の方から書く、とでも思い込みがあったのだろうか。日本語の文章、表記が縦書きから横書きに変わる葉境期の戸惑いが見て取れた。

現代は、言うまでもなく圧倒的に横書き。スマホのメールを筆頭に、テレビのニュース、官庁の文書までが横書きになった。NHKの『100分de名著』という番組でも枕草子の一節までが横書きなのだから。いまだに縦書きなのは新聞、本、書道くらいではないか。さて、ここからやっと篆刻の話になります。

結論を言うと、横書き時代の篆刻、たとえば「敬志」という名前の印は、こうあるべきではないか。まず、文字の配置。従来の篆刻の常識では文章の縦書きが前提だから、右に敬、左に志なのだが。これは横書きのままに左から敬、志として、文章の方向と名前の順を揃えて、目線の混乱を無くした。さらに、文字が赤くなる朱文の周囲の枠は。一般には四辺の太さをほぼ均等にするが、私は太さを変えることが多い。下は安定感を出すためにやや太く、上は文字の上に伸びる線を邪魔せず、圧迫感を無くすために細く、また破ることもある。左右の枠は、従来の篆刻は文字が右からだから、右は太く、左は細くか破るかにするのだが。横書きの敬志だから、左の辺を太く、右の辺は細くまた破って、目線の流れに添わせている。偉そうに言うこともないけれど、これが横書き用の名前の篆刻。

私はメールにもハンコを挿入しようと「メルはん」というネーミングまで考えて、HPでもお勧めしていながら、その篆刻風画像は縦書き用のままだった。その不自然さに最近やっと気づいたことを大いに恥じている。しかし、まあ、縦書きでも横書きでも兼用できるように、文字の順はともかく、枠は左右変わらない太さで、というテもあるんですが・・・

 

ページ上部へ