両方、忘れよう。(篆刻:両忘)

両忘
仲畑さんの有名なコピーに「好きだから、あげる。」というのがありましたね。 この「両忘(りょうぼう)」、篆刻として別に取り得もないけど、「好きだから、載せる」 上は密、下が疎、という構成の定石。字体だって、普通。 自分では、このあたりから楽篆堂流の兆しを感じるが、他人様には分からない。 好きなのは、その意味。でも、両方って、何の両方なんだ。 両方は、こっちとあっちなら、何でもいい。いわゆる反対語です。 貧と富。美と醜。苦と楽。上手と下手。寒と暖、高と低でもいいですよ。 ここにあるのは、世にいうところの価値。ふたつの価値から、差や違いが生じる。 この価値は、どれも相対的なものだということ。絶対的なものではない。 いくらクレオパトラの鼻が高いといっても、天狗にはかなわない。 目盛りの付け方で、どうにでも変わる、そんな相対的な価値や状態に 一喜一憂するのはやめようよ、やめちゃうと楽だよ、ということ。 禅の言葉だと思うけれど、日常でも、長い人生でも、これは言葉の常備薬。 そうだ、剣道の勝った負けたも「両忘」でいこうと、袴に刺繍までしましたが、 刺繍したからって身につく訳でないことは、万年三段が証明しております。
ページ上部へ