下半身に、難あり。(篆刻:上虚下実)

上虚下実
さて、剣道のなくなった土曜日にしたのは、畑づくりであった。この時期になると、 野菜の苗をいろいろいただくから、否が応でも畑らしきものを用意せざるをえない。 3月の初め、ミニ耕運機で土を起こして、石灰を撒いたまま放っておいた。 堆肥をばら撒いて、もう1回耕運機で掘り返し、かき回し、それから鍬で畝を立てる。 昼に缶ビール1本飲んで昼寝するから、10坪あるかないかの畑で1日仕事になる。 続く日曜日は、何年も植木鉢に植え放しだった大王松、壇香梅、大手毬、 衝動買いしたままだった姫シャラ、鉄線などなどを、やっとのことで地植えした。 普段は、パソコンの前か篆刻用の机で座ったまんま。腕だけしか動かさない身体で、 土日に急に働くことになった筋肉。夕方に一段落してケジメのビールを飲めば、 それまで嫌々付き合っていた筋肉がいっきに不平を言い始めて、収拾がつかない。 つねづね庭から向かいの畑で鍬を振るお婆さんの仕事ぶりを見て感心するのは、 無駄な力を使っていないことなのだが。鍬でも竹刀でも、無駄な力を抜くには、 それこそ百錬しながら、痛い辛い苦しい思いの中から自得するしかない。 篆刻は、「上虚下実」。下がしっかりしなければ、上はしなやかになれない、という すべてに通じる真理だが。私の虚ろな足腰では、とうに日暮れて道見えず。
ページ上部へ