要するに、腰。(篆刻:要領)

要領
晴れて剣道部員となってから、すぐに夏休み。四国の高知に家族旅行した。 桂浜で竹刀を振りたかった。いや、正確には竹刀を振っている写真を撮りたかった。 駐車場で道着になって、坂本龍馬の銅像の前から、桂浜に下り立つ。 裸足で、ぞんぶんに竹刀を振る。もちろん、その勇姿をカメラにおさめる。 車に戻って着替えたら、さあ、高知名物の「アイスクリン」を食べなくちゃ。 ふたたび銅像の前、アイスクリン売りのお爺さんのところへ。と、お爺さんが言う。 「あんたは、龍馬にゆかりの人か?」。きょとんとする私に続ける。 「と思ったのだが、花も手向けんし。この銅像は、高知の青年が募金で建てたが、 わしら金の無い者は勤労奉仕をした。彫刻家の本山白雲先生がおいでのたびに、 龍馬の話はよく聞いた。・・・で、そう思ったんだが」 以来、私はますます龍馬のファンとなり、高知県人を尊敬するようにもなったが。 龍馬と見まがう男の桂浜での写真は、言うまでもない。言ってもひと言、ヘッピリ腰。 篆刻は、「要領」。要は女性の腰骨、領は首のこと。ともに人体の最も重要な 部分だから要領という。そして二十有余年、私の剣の道は、その道の何たるか、 いっこうに要領を得ないままに終わった。要するに、腰らしいのだが・・・
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