草に、詫びる。(篆刻:草)

草
20年間も放っておいて、本当にすまなかった。と詫びる相手は、庭なのだが。 25年前に、ここに越してきた時は、家の前庭には小砂利が敷かれていて、 小まめに草を引いた田舎家の庭の姿をとどめていたのだけれど。 30代後半から50代後半のアレやコレやで放置され、いつか草は伸び放題。 夫婦ともども野草の姿は嫌いではないから、滅多に草刈もしなかった。 ある日曜の朝、近所のゴルフ場に早く着いた知人が、我が家に寄ったが、 庭は膝まで草ぼうぼう。玄関で呼んだが、こっちは寝ていて聞こえない。 さては引っ越したかと、帰ってしまったこともある。それでも改心しなかった。 逗子から帰ってSOHOとなり、瓦のひさしを直したのを機に一念発起。 庭の整備に取り掛かったのが3年前。山野草の地植えに挑戦した。 花壇もどきでは、エビネやナルコユリなどは簡単だが、カタクリ、ササユリなど なかなか咲きにくいものたちも安定して花をつけてくれ、まずまずの結果。 前庭で何回踏まれても花が咲き、種が落ちるスズメノカタビラ、オオバコなどは 文字通り草の根を分けて、1本ずつ引き抜く。「20年も、好きにしたんだから、 そろそろ退場だよ」と、つぶやきつつ。篆刻は、「草」。その姿のまんま。
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