蛍を、そのままに。(篆刻:無為天成)

無為天成
蛍の話をしたすぐ後に、新聞に『ホタルの放流「極力行わず」』の記事があった。 蛍の愛好家や研究者でつくる「全国ホタル研究会」。その6月の大会で、 指針が採択されたという。記事の最後には『会長は「蛍を増やせ増やせと 突っ走ってきたが、一度立ち止まり、周辺環境やほかの生物のことも考えたい」と 話している。』とある。早速、ホームページでその指針を読んでみれば。 蛍の幼虫は肉食性で、食物連鎖の上位にあるから、カワニナなど餌の生物群を 激減させるなど生態系に大きな影響がある。だから、もう放流は極力行わない。 もし放流するなら、その地域や水系にいるものを増殖してにしよう、という。 つまり、ホテルなどがイベントで、遠くから持ってきて放すなどは、とんでもない。 ビオトープと称して、蛍を強制移住させることも、よろしくない、ということだ。 篆刻は、「無為天成」。作為はできるだけ無いように、天の成すがままにが、 私の篆刻の理想なのだが。蛍もまた人為をやめて、天然自然に任せようという 反省の時期にきた。河川の護岸は治水に必要だけれど、コンクリートブロックと いう無粋で不毛な人為を止めないかぎり、わずかに残った蛍も消滅する。 無為天成とは、努力も工夫もしない、成り行きに任せる、ということではない。
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