安易な、猿。(篆刻:安)

安
畑に枝豆を見に行った。普通の枝豆も、丹波の黒豆も、そこそこ育っていた。 葉がレースのようになっていたナスも、薬を撒き、肥料もやったから、ナスらしき ものが3個ほど採れた。さてトマトは、と見れば、最初に赤くなるはずの房が折れて、 落ちている。そばには、いちばん赤く大きなのが、半分かじって捨ててある。 さては、猿めか。大阪の孫と、どちらが先に赤くなるか、競争しているというのに。 さあ、こんどはヤマモモの方で、猿の声が聞こえる。しのび足で見に行ったが、 近づく前に逃げられた。枝がボキボキと折られて無残。カミサンは、「ヤマモモなら もう十分採ったし、人にもいっぱいあげたから、いいじゃない」と言うのだが。 「ヤマモモはいいけど、畑のトマトは駄目だよ」と、猿に教えられないのだから。 以前に見たNHKの猿害問題の番組で、猿の権威の先生の名言があった。 「猿も、安易に流れるのです」。山の奥で、わずかな木の実を探すより、人里の 野菜や果樹の方がはるかに安易。だが、それと引き換えに、人や犬に追われる 恐怖があることを、教えなければならない。と、2年も3年も辛抱強く猿を山に 追い返すことを続けている。篆刻は、女手風の「安」。家で女が安んじる形。 猿と男の戦いは安易ではないと、安物のモデルガンを強く握りしめるのだった。
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