陽炎と、送り火。(篆刻:遊糸)

遊糸
あまりの暑さに、そうそう「遊糸(ゆうし)」の篆刻があったと、取り出したのだけれど。 遊糸は陽炎(かげろう)のことで、糸遊(いとゆう)ともいうが、季語としては春。 なるほど、春の急に強くなった陽射しに暖冷の空気の流れから起こるので、 こんなに暑い日が続けば、冷気などは冷蔵庫の中にしかない。三つ目のハスの 花も、お盆に間に合わせて咲く大役を果たして、ぐったりと散りかけている。 さて、お盆とは。お釈迦さまの高弟・目連尊者の母親が、愛情は使えば減るものだ と思って我が子だけを可愛がったので、物惜しみをした罪で餓鬼道へ堕ちた。 地獄で苦しむ母の姿を透視した目連が何とか母を救おうと供養をしたのが 盂蘭盆会、お盆の始まり、というのだが。これは、恩や孝を重んじる中国で生まれた 偽教だとか。たとえ由来が偽であっても、霊の供養は、かけがえのない行為。 我が家は法華宗で、お盆は12~14日なのだが。きのう16日は、京都下鴨の 友人のマンション屋上から五山の送り火を拝ませてもらった。右に大文字、 正面に妙と法、左に船形、はるか遠くの左大文字までが見える絶好の位置だ。 デジカメの夜景モードで目いっぱいのズームで撮ったが、ほとんどは 手ブレで赤い炎が筋になって写った。それは、夏の夜の遊糸のようでもあった。
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