足るを、知る。(篆刻:知足)

知足
以前、新聞で読んだときは、あまりの貧しさからの苦しまぎれかなと思ったが、 どうもそんな次元のことではないらしい。ブータンという国のGNPならぬGNHは、 グロス・ナショナル・ハピネス。国力を国民の幸福の総量で表す、という考え方だ。 NHKがお盆に合わせて5夜連続で再放送の「五木寛之21世紀・仏教の旅」。 さすがに全編を見るのは無理だったが、ブータンの人々の笑顔は本物だった。 国民の多くが、毎朝早くお寺に参って、マニ車を回し、仏に祈る。その理由は、 すべての衆生が生前の業因で生死を繰り返す6つの迷いの世界、地獄・餓鬼・ 畜生・阿修羅・人間・天上の六道で、再び人間に生まれたいという切なる願い。 打算的とも思えるけれど、なぜまた人間かの訳が、「いま、幸せだから」であれば、 さらに、なぜ幸せと思うかを聞きたい。答えは「満ち足りている」からなのだ。 もっと何かが欲しいと思わないか、との問いにも「欲望にはキリがないから、 そんなことは考えない」と笑って言うのが、すごい。篆刻は「知足」、足るを知る。 外連(けれん)味を避けて、ただ素直に彫ってみたが。きょう、61歳になった私。 人と競ってまで何かを手に入れようとは思わなくなった昨今。これが知足なのか、 単なる生命力の減衰なのか。知足のとっかかりにいると、思いたいが。
ページ上部へ