東へ、帰らず。(篆刻:不東)

不東(新)
久しぶりに薬師寺で般若心経の写経をした。この8月15日の終戦記念日に、 家で写経した1巻をまず納めて。それから、お写経道場でカミサンと孫も一緒に 2巻、これでちょうど100巻目。「薬師寺伽藍復興 写経勧進納経集印帳」は 金色の9冊目。あと8巻でひと区切りになる。そのほとんどは、カミサンが 折りにふれてお写経をしたものだが、貧者の一灯として、と書きかけて。 いやいや、貧者の一灯とは尊大な、と思い直す。「貧者(貧女とも)の一灯」とは、 貧しい者の真心のこもった寄進は、たとえわずかでも富める者の万灯より尊く、 功徳があるという話。誰が誰に向かって言う言葉なのか、戸惑ってしまう。 お寺さんのホームページの中には、貧者の一灯の由来を解説しながら、 お金持ちのご寄進だって尊いし功徳がある、とフォローを忘れないものもある。 篆刻は、「不東」。玄奘三蔵法師が仏典を求めて唐から西の天竺を目指す旅で、 目的を達するまで東に帰らないとの、決意の言葉。薬師寺の伽藍復興を 発願した故高田好胤さんが、ご自分の決意と重ねあわせて書かれた文字を 竣工直後の玄奘三蔵院で拝見した。太い朴訥とした筆の跡に触発されて、 帰宅してすぐ彫ったものがあるが、これでも新作。決意がないから、進歩もないが。
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