生んで、育てる。(篆刻:愛育)

愛育
横浜から奈良に越してきて、かれこれ30年になる。住みはじめた頃は、 まあ、何と覇気のない町なのだろうと驚いたが。最近は、奈良はこのままでいい、 余計な開発などしないで、そっとそのままにしておいて欲しい、と思う。 京都のきらびやかな賑わいに触れて、奈良に帰りつくと、なおさらそう感じる。 ただし、医療体制、特に母子医療の後進性だけは、その限りではない。 橿原市の妊婦を奈良の病院が受け入れ(ることができ)ず、大阪に搬送される 途中で流産した。マスコミ報道の論調をただうのみにする訳ではないけれど。 規模も技術も高度と認定される総合周産期母子医療センター、比較的高度な 産科・小児科医療が行える地域周産期母子医療センター、そのどちらも無い県が、 秋田、山形、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島、そして岐阜と奈良なのは、事実。 篆刻は、「愛育」。育は、母と頭を下に生まれたばかり子の姿。愛は、後ろに心を 残して立去ろうとする人の姿。愛の語源が、愛惜の意味だったことが分かるが。 愛することも育てることも、生むことから始まる。母と子の命よりも、JR奈良駅と その周辺の立体高架工事を優先する、そんな県の姿勢に間違いはないか。 母と子の命より、平城遷都1300年祭が大切か。道より、祭りより、人の命が先。
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