月という、馬。(篆刻:月)

月
伊丹十三さんが何かの本で、床屋で眉を剃った男のキッパリしすぎる顔を 「馬から降りたばかりの鞍馬天狗」と表現して、言いえて妙と感心した覚えがある。 鞍馬天狗は、もちろんアラカンこと嵐寛十郎。その馬が白馬だったことを 知る方も多いだろう。この白馬の名は「ムーン号」。実は、そのムーン号こそ、 私が乗馬らしきものを習った馬。きっかけは、以前に書いた王選手のCMだった。 大船撮影所だったと思うが、打ったボールが水滴になって飛び散る撮影現場。 待ち時間の雑談で、「馬に興味があるなら、いつでも乗りにおいでよ」と 誘ってくださったのは高橋さん。お言葉に甘えて、早速家族で牧場まで出かけた。 そして乗せてもらったのが、ムーン号。かなりの歳だったが、おとなしく賢い。 「チッチ」などの声をよく聞き分けて、歩く、止まる、走るが自在なのだった。 手綱さばきを覚えて、次は多摩川に遠乗りをという頃、奈良に引越しになる。 高橋さんとは、タカハシレーシングのボス、高橋勝大さん。特殊馬術はもちろん、 カースタントの第一人者で、TVのタイトルで見るたびに懐かしい。急の引越しから、 30年近い。何のお礼もしなかったのに気づいて、いま冷や汗が流れている。 ホームページには、ムーン号の写真もあった。せめて篆刻は、天駆けるような「月」。
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