変わる、山の色。(篆刻:山色清浄心)

山色清浄心
今年の紅葉は遅いけれど。それでも庭のモミジは真っ赤だし、イチョウは下から 黄色くなってきた。そこで、篆刻は「山色清浄心」。蘇東坡の詩の「山色清浄身に あらざること無し」によるから、「心」でなく「身」なのだが。山の姿かたちは、 すべて清浄身(仏の法身)そのもの、ということ。花は自分の美しさを誇るけれど、 紅葉はただ素直に美しいから、心が清らかだという、うがった解釈まである。 ところが、いま日本の各地で紅葉時期の前から、森林が赤くなっているという。 原因は、カシノナガキクイムシ(略してカシナガ)。ナラ、シイ、カシなどの幹に 穴をあけて、その中で菌を培養して幼虫を育てる。その木は水を吸い上げられず、 いわゆる「ナラ枯れ」になる。その1本から3万匹の幼虫が生まれて、 ナラ枯れは拡大する。最近の高温、少雨が被害を加速させているのだという。 昔は、枯れそうな木はすぐ伐ったし、ある適度育ったら薪や炭にしたから、 カシナガの被害だって目立つこともなく、拡がりもしなかった。この地区でも、 炭を焼いているなんていう物好きは、自称「西狭川炭焼倶楽部」の熊さんひとり。 日本の南から北へ、山の下から上へ、仏の身体そのものの森林に虫が巣食って、 うごめき、増殖している現実。これこそ現代の地獄絵ではないかと、薄ら寒い。
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