温かい、話。(篆刻:温)

温
私はドラゴン・コレクターだ。ある霊能者に「龍にまつわるものをそばに置くとよい」と 言われたからだが。犬年生まれもその理由。昔の侍は、犬侍と呼ばれるのが嫌で 「裏辰」と言った。侍でもないのに、こんな薀蓄を言うのも、コレクターの悪い癖。 ひと頃は龍なら何でも買ったし、人からも頂いた。これじゃキリが無いと気づいて、 熱も冷めた。多少自慢できるのは4、5点で、ほとんどはガラクタの類いです。 その中に小さなネジ蓋と取っ手つきのカーリングのストーンのようなものがある。 直径20センチ、高さ10センチほど。中は空洞で、素材は真鍮だろうか。 上半分に龍の絵と「看花知歳新 川柳覚春媚 春暖燕街泥 政清人離福」の詩が、 対にある。下半分には、梅と唐草の模様。その真ん中には「康煕御製」の文字。 神田の中国書店の2階で偶然見つけた「湯婆」、中国製のユタンポなのです。 こんな物の贋作には何の価値もないだろうから、本物だとすれば、清の時代、 1662年から1722年の間。康煕帝その人ではないまでも、宮廷の誰かを 温めてさしあげたものに違いない。それからざっと300年。日本では、再び 環境にやさしいユタンポのブーム。私もポリエチレン製のオレンジ色のそれを 愛用している。朝でも、中のお湯はほどよい温かさのまま。洗顔にぴったりです。
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