春の、妖精たち。(篆刻:春)

春
あっという間に河津桜が満開になった。冬の終わりに剪定した啓翁桜の枝を そのまま挿しておいたら、一輪がほころんで、まだまだ続けて咲きそうだ。 山野草の花壇では、いよいよ妖精たちが年1回の短期公演の幕を上げた。 スプリング・エフェメラル。”ephemeral”は、短命な、束の間の、はかないこと。 夏を待たずに姿を消すものが多いからだが、花はなかなかにしぶとい。 キクザキイチゲは3月15日に2輪咲いて、さすがに濃い空色は褪せてきたが、 まだ咲き続けている。去年1輪だったカタクリは2輪に増えて、こちらも6日目。 その間には、強い雨や風もあったが、花びらを閉じてしのぎ、陽が差すとまた 花びらを躍らせて、カタクリ独特の舞いを始める。ヤブイチゲも、小さな葉の間を よくよく見ればしっかり蕾をつけて、次の出番を静かに待っている。 日銀の総裁が空席になろうが、ガソリン税の暫定税率延長がどうなろうが、 茨城で8人が殺傷されようが、イラクでアメリカ兵の死者が4000人になろうが、 チベットでデモ隊に中国の官憲が発砲しようが、大リーグの開幕戦で松坂大輔が 登板しようが、エンデバーが帰還の途につこうが、そんなことはどこ吹く風で、 春の妖精たちは約束を律儀に守って、定期公演をきっちりとこなすのだ。
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