我が家の染井吉野が満開の頃。あるご夫婦がみえて、開口一番こうおっしゃった。
「いやあ、うちの桜自慢に寄ったんだけど、ここには負けたわ」
たしかに、下の道から見上げる我が家は、染井吉野に続いてしだれ桜、八重桜が
咲き始め、雪柳、山吹、椿、ぼけ、石垣には芝桜と、1年で最高の光景では
あったけれど。これを聞いて、カミサンとふたり、きょとんとしてしまった。
そうか、世間には庭や草花で勝ち負けを考える人もいるんだ。しかし、我が庭は、
これが自分のそばで咲いてくれたらいいなと思うまま植えた、ただの成り行き。
由緒正しい園芸種よりは野草に近く、数からすれば、雑草の類いの方が多い。
そこいらのことをひと様にもちらっと表明しておこうかなぁ、という気になった。
そこで思い出すのは、やはり白洲次郎の「武相荘(ぶあいそう)」という命名。
武蔵と相模の境と示しながら、そこに住む主人の気骨、風貌までが伝わる。
それを超せないまでも、近い線を狙ってひねりだしたのが、この「百野草荘」。
住む者の、いかにも物臭そうな様子が伝わると、気に入っている。篆刻の次には、
この連休に看板づくり。連休が明けたら、我が家は「楽篆堂」、「Highest High」、
「百野草荘」と、板だらけ。「まな板荘」と呼ばれないかと、恐れてはいる。
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物臭そうな、家。(篆刻:百野草荘)
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