生命の、格差。(篆刻:生命)

生命
毎年のことだが、卵を産んだ親ツバメは、いつも留守がちで、雛がかえるのかと 心配になる。が、縁側にきれいに割られた卵の殻が落ちると、心を入れ替えたように 熱心に餌を運びはじめる。親が餌をやるは、ほんの一瞬のことだから、 要領のいい雛は、いつも親が来る場所にいて何回も餌をもらう。生まれたのが 遅かったのか、隅の鈍なやつは、いつも貰いそびれるから、育つのも遅い。 子ツバメが巣のへりで、羽をバタバタさせはじめたら、飛ぶ準備完了の合図。 いちばん元気なのが意を決して飛んでも、庭の隅には電話線があるから、 巣からあまり離れずに、飛んだり休んだりできる。親ツバメが寄り添って、 「どうだ、思ったほど怖くないだろ」などと聞いている(らしい)のも微笑ましい。 夜は、子ツバメだけが、巣で寝る。皆が飛べるようになるまで、そんな日が続く。 そして、ある朝、巣が空になる。親も子も戻らない。巣立ちは完了したらしい。 ただ、カミサンが卵を数えた時は7個あったというのだが、育ったのは4羽。 手鏡で中を見ると底に黒いものがある。ある程度育ったのに、押しつぶされて 死んだのだろう。カミサンが、庭に埋めた。篆刻は「生命」で、生は木の枝葉が 生え伸びる形。木も草も、鳥さえも、強いものしか生き残れない。それが自然。
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