ある薬草の、伝説。(篆刻:ゑびや)

ゑびや 開高健全集第12巻は、昭和38年から1年半にわたり週刊朝日に連載された 『ずばり東京』というルポルタージュ。文庫本のための「まえがき」「あとがき」も ノン・フィクションとフィクションのはざ間で苦悩する心を吐露して名文だが、 ここでは置いて。「感傷がほしくなったので縁日を覗きにいった。」ではじまる 縁日の話の中で、ガマの油売りなどの大道芸人が消えてしまったと嘆いている。 その口上は、「さぁさぁお立会い、血止めの薬はござらぬか。あるよあるある、 ガマの油かオトギリソウ・・・」だったというが。オトギリソウは、弟切草。その昔、 ある鷹匠が鷹の傷を治すことで有名だったが、薬草の名は秘密にした。ところが 人のよい弟がその名を漏らしたので怒り、弟を切った。その血が飛び散って、 その跡が葉や花に残ったという悲しい伝説がある。いま、それが庭に咲いている。 朝開き午後には閉じる、小さく黄色い花には、確かに黒いシミのようなものがある。 漢方では小連翹(しょうれんぎょう)というらしい。篆刻は、東京の漢方薬屋さんの 「ゑびや」。この印に続いて、パッケージ用に冬虫夏草、高麗人参から黒蟻、蜂子、 水蛭まで約10点を書き印でお渡ししたが。果たして売上げ向上に貢献したのか、 どうか。弟切草・小連翹は扱っておいでなのだろうか。その効き目は、いかに。 ※弟切草の美しい花の姿は「守田蔵 花ごよみ」をご覧ください。
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