朝食の後では、もう陽射しが強くて、庭の水撒きには遅すぎるから、大暑のきょうは
起きてすぐに済ませた。水をやれば雑草も伸びる。この季節、草刈、雑草取りの
庭仕事も、土日だけでは追いつかない。中間の水曜もやらざるをえないかと考えて
いるのだが。毎日朝5時に起きて9時まで小説を書き、その後はすべて庭仕事を
している、と読んで驚いた。朝日新聞社刊『夕庭』は、文・作庭 丸山健二。
帯には「ペンを鍬に持ち替え独力で造り上げた”至高の楽園”」とある。
雑草の間に、ちらほらと花が咲く我が庭とは、天と地の差。草1本も許さずと
まなじり決したスキンヘッドが目にうかぶが。埃ひとつない、いつカメラマンが来ても
撮影OKの応接間のようで。百野草荘主人には、どうも感情移入ができない。
そんな庭を造る人の、その小説とは、どんなものか。怖いもの見たさで、読んだ。
『日と月と刀』上下。室町時代を思わせる、荒唐無稽な男の一生で。段落ごとに
太明朝の短文。本文は延々と「、」で続き、波か風のように高揚と消沈、希望と
落胆を繰り返す。読み辛さに馴れる頃は、前人未到の冒険と認めざるを得ないが。
日と月の下では、小説も庭も人間すらも何ほどのものかという、叫びも聞こえた。
篆刻は、仏への懺悔・悔過(けか)の一節「日月清明」。ただ宇宙の清明を願うのみ。
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日と月と、庭。(篆刻:日月清明)
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