言の字源は、神に誓う言葉を器サイに入れて、違約したら神罰を受けるとの
覚悟で辛(針)を置いた形による。言葉が軽くなった現代の日本はさて置いて、
言葉を発するにはそれだけの覚悟がいる。さて、「音」は白川先生の『字統』では
「言にあるサイの中に一を加えて、中に自鳴の音を発すること」だという。
神が祈りに感応したことの「音づれ」であり、「訪れ」はここから生まれている。
さらに、音に心を加えた「意」は、神の反応の音づれを憶測すること。これほど
音は神聖なもので、風の音、楽器の音で神意を占うことが多かったという。
そうしたあれこれを想いながら造形を試みたのが、この篆刻、「音」。
人の祈りに神が反応して、その音づれが器に響き、そばに置かれた辛までも
共鳴させて、調和のとれたハーモニーとなる、ように見えましたらご喝采。
まず、『字統』のその漢字の項を熟読する。漢字が生まれた古代の意味と
現代日本での意味を、頭に叩き込む。それを想いとして、直線を伸ばしてみる。
伸ばした線を気持ちよく曲げてみる。曲がった線が何本かあれば、その長さを
整えてみる。自由で伸びやかでありたい。しかし、漢字の根幹をゆがめては
いけない。そうして生まれた篆刻「音」なのだが、神の音づれは、まだない。
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神の、音。(篆刻:音)
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